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ぼくは、ぶたれても
【美月 side】
どうぶつのえいがを見おわって、かたぎりさんに、どのどうぶつがいちばん好きってきかれた。
ライオンもかっこいいけど、やっぱり、トラがいちばんかっこいい。
「トラです!」
「美月ちゃんは虎が好きなんだね。そのぬいぐるみも虎だね」
「はい!とらきちです!」
かたぎりさんは、オオカミがいちばん好きなんだって。
オオカミも、とおぼえするの、かっこよかった!
「さて、次は何をしようか」
「あ、あそびますかっ?ぼく、お気に入りがあるんです!」
かたぎりさんに、赤い車を見せてあげようと思って、麗彪 さんのおへやからもってきた。
でも、赤い車を見たかたぎりさんが、またびっくりしたかおをした。
「それ、おじさん探してたんだ。誰が勝手に持って行っちゃったのか、調べて来いって言われたんだよ。やっぱり、麗彪さんが持って行ったんだね」
え・・・。
かってに、もっていった・・・?
じゃあ、かたぎりさんは、麗彪さんのこと、おこるの?
麗彪さん、ぼくに赤い車もってきてくれたのに、ぼくのせいでおこられちゃう・・・!
「ち、ちがいます!ぼくが、赤い車もってきてって言ったんです!麗彪さんはわるいことしてません!ぼくがほしいって、もってきてって言ったんです!だから・・・っ」
ぶつなら、ぼくをぶって。
よしとらさんを、ぶたないで。
ぼくは、ぶたれても、だいじょおぶだから。
「美月ちゃん、泣かなくていいよ。麗彪さんをぶったりしないから。美月ちゃんの事もね」
「ゅ、ゆるして、くれますか・・・?」
「・・・いや、最初から麗彪さんも美月ちゃんも悪くなかったんだよ。おじさん忘れてたんだ、麗彪さんにこの赤い車あげたの。だから誰も悪くないんだ。大丈夫だよ」
麗彪さん、わるくない・・・?
よかった・・・麗彪さんがおこられなくて・・・。
ぼくのせいで、麗彪さんがぶたれるなんて、ぜったいやだもん・・・。
「・・・ょかったぁ・・・」
「ごめんね、だからもう泣かないで・・・」
「美月!!」
あ、麗彪さんだ!
おかえりなさいって言わなきゃなのに、泣いちゃって声がうまく出なくて・・・。
「・・・っ、ょし、とぁさ・・・っ」
「てめえ片桐 、美月に近付くなっ!!今からカンナんとこ行って顔変えて来いっ!!」
「はい?」
それから、泣きやむまで麗彪さんにだっこしてもらって、かたぎりさんもわるくないからおこらないでってやっと言えて、みんなでおやつ食べた。
ぼくがなんで泣いちゃったか、かたぎりさんがはなしたのに、麗彪さんはまた、かおかえてこいって言ってた。
かたぎりさんのかお、こわくなんてないのにな。
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