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紫の体重計
【麗彪 side】
美月 の身長を測ったおかげで、部屋に体重計がなかった事に気付いた。
仕方ないので、下の階に住まわせているカンナに電話し持ってこさせることにした。
カンナは組 の医者だ。
ちゃんと免許は持ってるんだが・・・あの見た目がな・・・。
美月が怯えるだろうなと思いながらも、怯えた美月が俺に助けを求めて抱きついてきたりするかもとか考えてる俺は最低な大人だ。
「はぁ~い、持ってきたわよぉ~。麗彪くんってば今さら体重とか気にし出したのぉ~?そんな必要なぃ・・・ってなにこの娘 ちょ~カワイイんですけどぉ~!!」
「っ!?」
突然現れたデカい女らしき野郎に、案の定怯えきって俺の後ろに隠れる美月。
・・・可愛い。
「あぁんっ、恐がんないでぇ~、あっ、もしかしてあなたが美月ちゃん?ホントにカワイイのねぇ~、麗彪くんが一目惚れして溺愛してるって駿河 くんに聞いてたけど納得だわぁ~!ねぇ、あたし優しいわよぉ~、お注射だって上手にしてあげるからぁ~」
「ひん・・・っ」
注射という言葉に泣き出す美月。
可愛いのはいいが、これ以上恐がらせたくない。
抱き上げて背中を擦りながらなだめる。
「美月、こいつがカンナだ。前に話したよな、免許持ってる医者だ。美月の体重を量るのに体重計を持ってきただけだから、もう帰るぞ」
「ええ!?もぉ帰らなきゃだめなのぉ?美月ちゃん、ねぇ、あたしにも抱っこさせてぇ~」
「だめに決まってんだろ」
カンナが持ってきた紫色の体重計に、美月をそっと乗せる。
体重は32キロになっていた。
良かった、少しは増えてたんだな。
まだまだ軽過ぎるんだが。
「・・・美月ちゃんって、いくつだっけ?」
さっきまでの笑顔が消え、真顔で聞いてくるカンナ。
おい、頼むから俺にキレるなよ。
カンナにキレられると次から麻酔なしで処置されるからな・・・。
「15だ」
「嘘でしょ今までどんな生活してきたの!?今は時任 くんのご飯食べてるのよね?それで何キロ増えたの?」
「あ、ぼく、ぼくかんがえる!・・・ぇと・・・4キロです!」
美月、どんどん計算が早くなってんな。
賢過ぎんだろ。
「美月ちゃん、ご飯は残さないで食べられてる?食べた後、げーしちゃってない?」
「・・・ぁ、の・・・のこさ、なぃ・・・です・・・」
相変わらずカンナに怯える美月。
恐いの系統は違うが、片桐 は大丈夫だったのに、カンナはだめなのか。
カンナはただのデカくてハデな女らしき野郎なんだが、いつまでも怯えてるのは美月らしくない。
それには、カンナも気付いたらしい。
こいつは精神科医の免許も持ってるからな。
「美月ちゃん、ちょっとまっててね」
徐にポケットからハンカチを取り出し、口紅を拭き取るカンナ。
ああ、そうか、美月はカンナの口紅を気にしてたのか。
オカアサンと同じ色だったんだろう。
「はい、これでちょっとは恐くない?」
「・・・ぁ・・・はいっ」
「良かったぁ~!美月ちゃんに嫌われたくないから、美月ちゃんに会う時はノーメイクにするって決めたわ!」
ノーメイクか。
そうなると、カンナはそもそも女じゃないって説明しなきゃならなくなるな。
美月に、女装家って生き物が理解できるといいんだが・・・。
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