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ブシーキャット
【麗彪 side】
退屈だ。
軽く飲んで、適当に食べて、兎に角早く終わって欲しいと窓の外ばかり見ている。
仕事内容以外は話しかけさせないよう時任 がうまい事やってくれているお陰で、まだ誰も殴ってはいない。
・・・まあ、表の仕事関係で誰か殴った事はないんだが。
ああ、美月 がいればなあ・・・。
あのノンアルカクテルなんか、色も綺麗だし花やら果物やら乗ってるし、美月に飲ませたら喜んだろうな。
チョコレートファウンテンは絶対に喜ぶだろ。
苺、好きだしな。
「ああクソ、美月に会いてえ」
「まだ1時間も経ってません、我慢してください。あと、その人殺しみたいな顔もやめてください」
「してねえよ」
さっきから、少し離れた所にいる女共がこっち見てきゃいきゃい言ってんのが鬱陶しい。
俺の視界に入るんじゃねえ。
「時任、俺の側を離れないでくれ、俺を独りにしないでくれ」
「美月がいないだけでそこまで駄目になりますか。だったら駿河 の言った通り連れてくればよかったじゃないですか」
「・・・後悔してる」
本当に後悔している。
美月がいても、変な野郎が近付く事すら出来ないように俺たちでガードしてりゃあ良かったんだ。
ごめん美月・・・。
ああ、土産は何がいいだろう。
今からパーティーが終わるまで、美月への土産を何にするかだけ考えて乗り切ろう・・・。
「・・・麗彪さん、入り口、あれって・・・」
「あ?」
時任が呆けた顔で入り口を指す。
誰か来たのか・・・?
「・・・美月っ!?」
天使が降臨した。
執事だか駿河だかわからんお供を連れ、ふわふわした雰囲気に合ったふわふわしたドレスを着て。
少し不安そうな顔で会場を見回している。
頼む執事、俺が行くまで誰とも接触させるな・・・!
「美月、来てくれたのか!」
「麗彪さんっ、ぁの、ごめんなさい、おるすばんって言われたのに・・・」
「いいんだ俺が悪かった、ごめんな。それよりドレス着て来たのか。可愛い、よく似合ってる」
俺に言われ、照れたように笑う美月。
可愛過ぎる・・・!
ああ・・・問題は俺以外の野郎共にこの可愛過ぎる美月を見られるかもしれないって事だ。
「時任、仕事関係だろうが何だろうが一切誰も近付けるな。駿河、執事としてしっかり対処しろ」
「わかりました」
「俺は秘書ですけど、まあ美月くんの執事も悪くないですね~、善処します~」
よし、この2人に任せておけば大丈夫だろう。
美月の手を取りバーへ飲み物を取りに行く。
「何味のジュースがいい?」
「えっと・・・オレンジジュース」
「わかった。・・・ブシーキャットを」
美しくカットされたオレンジと小さな白い花が飾られたゴブレットを美月に渡す。
それを見て、大きな瞳をキラキラさせる美月。
・・・可愛い。
会場の角 にいくつかソファが置いてあったので、駿河がそこへ美月を座らせるよう言ってきた。
俺が美月と一緒に座り、時任が俺たちを庇うように立ち、駿河は晩飯がまだだった美月のために食べ物を取りに行った。
「これ、きれい」
「カクテルだ。アルコールは入ってない」
「あるこーる?」
「酒・・・まあ、大人の飲み物だな。美月ももう少し大きくなったら飲めるぞ」
・・・美月が大人に・・・なって欲しいような、欲しくないような・・・。
綺麗なオレンジ色のカクテルを一口飲む美月。
何故か少し複雑な顔をした。
「変な味がするのか?」
「ん・・・ジュースおいしいです、でも・・・ぁの、くちべに、へんな味・・・」
余りの自然な可愛さに気付かなかったが、美月は淡いピンクのリップグロスをつけていた。
口紅が嫌いな美月が、何故・・・駿河が無理やりつけさせるなんて事はないはず・・・。
「美月、口紅嫌いなのにつけたのか」
「・・・くちべにしたら、女の子に見えるかなって・・・麗彪さんが、ほかの女の子と恋人になったら・・・やだから・・・」
泣きそうな顔で俯く美月。
・・・・・・・・・だめだ、我慢できねえ。
「よしとらさ・・・んんぅ・・・っ」
美月の柔らかい唇に喰い付き、グロスを舐めとる。
俺のために、見る事すら恐がる口紅をつけていた美月。
可愛い・・・愛しい・・・欲しい・・・。
グロスを全て舐めとると、美月の瞳がうるうると潤んでいる。
ごめんな、もう少しだけ、お前を喰わせてくれ・・・。
「・・・んぁ・・・っ、ふ・・・ぅん・・・んく・・・っ」
深く口付け、美月の小さな舌に自分の舌を絡ませる。
逃げる舌を追い、何度も吸って、震えながら俺の服を掴む小さな手も捕まえて。
「・・・んっ・・・ぅ・・・っ、ふぁっ・・・はぁ・・・は・・・」
満足するまでしゃぶってから解放し、美月の濡れた唇を指で拭ってやる。
・・・さすがにヤり過ぎたかもしれん。
「美月、ごめ・・・」
「ぼく、駿河さんに、おひめさまにしてもらったの・・・だから、今の、ちかいのキスだよね・・・?ぼく、よしとらさんの恋人に、なれる・・・?」
「・・・いや、誓いのキスしたら結婚するんだろ。恋人より上のお嫁さんになるんだぞ。いいのか、俺みたいな獣 の嫁で」
「およめさんがいいっ!」
よし、じゃあさっさと帰って初夜といきますか。
美月を抱えて帰ろうとした俺だったが、美月に食事をさせろと駿河に叱られ、チョコレートファウンテンもまだ見せてなかった事もあり断念した。
チョコレートファウンテンを初めて見た美月も、苺にチョコを浴びせる美月も、それを頬張る美月もしっかり携帯で撮る。
満腹で眠くなった美月を抱いて帰宅する頃、会場内は「男3人に甲斐甲斐しく世話を焼かれる謎の美少女」の話で持ちきりになっていた。
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