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第11話 9、パーティー組もう

「さ、ジル。行こう」  そっと促されるように、繋いでいる手に力が籠った。 「……うん」  この、リヒトの圧にあてられた彼らは、大丈夫かなと心配になりながらも、ジルはリヒトについて歩いた。 「大丈夫、魔法使ってないし。まあ、これでも手を出せるようなら、その時はしっかり締めるから」 「締める?」 「そりゃそうでしょ? 俺の幸せの邪魔をする者は、馬に蹴られてなんとやらだよ。ハハッ」 「リヒトはなかなか怖いね」 「まあ、当然だよね。さあ、もう気にしない、気にしない! あ、旨そう! 今日はゴージャスだ。ワイバーン(鷲・ドラゴン系)の肉だ! どのパーティーが仕留めたのかな。俺、グレゴリー(熊)の肉も好きなんだよ」 「僕はガーゴイル(鳥)」  まあ、昨日は食べ損ねたんだけどね。  そっと心で呟く。リヒトと話しているので、自然とリヒトの事を考えて話していると、リヒトが表情を曇らせて尋ねてきた。 「食べ損ねた?」 「え? なんで知ってるの?」 「今流れ込んできて。ああ、ピアスのおかげ」 「そうなんだ。凄いね、さすがはリヒトだね」 「いやいや、それはありがとうだけど、なんで食べ損ねたの? さっきの彼ら?」 「え? あ、うん、まあ、そんな感じ?」  まあ、隠してもしょうがないし、ね。 「ふうん。成程」 「……リヒト?」  リヒトの背後の黒いものが、ジルには見えた気がした。 「……まあ、おいおいカウンターしていけばいいか」との、リヒトの黒い呟きはジルには聞こえなかった。  二人で並んで、夕食を受け取る。どこに座ろうかと、空いている席を探して周囲を見渡していると、右前方から、呼ばれる声がした。 「お~い! リヒト、ここ、ここ!」 「おお、ドニス」 「見たぞ、さっきの。独占欲丸出しの牽制! そう言えば日中のあの光は、リヒトだったんだろう? 浮かれまくってた恥ずかしいやつ」  浮かれまくってた恥ずかしいやつ?   ジルは首を傾げその言葉を反芻していると、シメオン先生と一緒の、日中リヒトと手を繋いで魔法を増幅した時のことを思い出した。 「全く恥ずかしくも何ともないだろうが。番が見つかってないからって、羨ましくても俺に絡むなよ~」  リヒトは、ふふんと得意そうに、ドニスに言った。 「はいはい。ごちそう様! まあ座れよ」  ジルはちょっと恥ずかしかったが、彼と一緒の初めての魔法だったから嬉しくもあった。ドニスの座っているテーブルに二人で向かい、そこに座った。ドニスの横にいた男の子がペコリと頭を下げる。 「こいつはクレス。同じ特Aの俺の幼馴染み」  ドニスはジルに紹介した。 「初めまして。ドニスとリヒトの腐れ縁の仲間です。よろしく!」 「初めまして、ジルです。こちらこそよろしくお願いします」  ジルも挨拶をする。 「ジルも座ろう」  リヒトに促され、ジルもリヒトの横に座った。テーブルを囲み四人がそれぞれ椅子に座って話を始める。 「まあ、食べながら話そうか。さっきの話はクレスにもしたんだけど、俺たち4人でパーティー組まないか?」  ドニスがリヒトとジルに言った。 「普通の授業より、断然シメオン先生の授業の方が面白そうだし! だってシメオン先生だよ? こんなのチャンス以外に考えられないよね!」  クレスが興奮して言っている。  シメオンは、リヒトの兄ラオネとパーティーを組んでいる。それは伝説になろうかという位の強さで、現在この国でもトップ3に入ろうかという、勢いのあるパーティーだった。  そのシメオンに教えて貰えるとはなんて幸運なんだと、クレスは興奮していたのである。 「だから俺たち、特Fクラスになってパーティー組もうぜ!」  ドニスも興奮している。 「成程! それもいいかもね。ジルはどう? OK?」  リヒトは、ジルの顔を覗き込んで聞いてきた。暫し逡巡した後、おずおずと口を開く。 「でも、僕が入ってもいいのかな? 僕の魔法はリヒトにしか効果ないみたいだし……」 「「それがいい!」」  ドニスとクレスは、声を揃えて言った。 「え?」  いいの? そんなんでいいの?  ジルは困惑した。けれども二人はワクワクした様な表情で言ってきた。 「って言うか、それは今日初めてのことだからだろ? もしかしたらリヒト経由で俺たちにも何か変化があるかも!」 と、ドニス。 「そうじゃない何かが起こるかも!」 と、クレス。 「ジルの魔法は未知数だからね!」 と、リヒトも楽しそうに話している。 「みんながそれでいいのなら、僕はいいよ」  ジルは、ホッと息を吐いて笑った。  嬉しい。嬉しいな。僕も一緒に仲間に入れてくれるんだね。ありがとう。 「じゃあ、このままシメオン先生に話そう」  そう言うと、リヒトは一点を見つめ黙り込んだ。 「……?」  みんなも黙ってしまったので、ジルは不思議に思いながらも同じように沈黙した。 「……うん。OKだって!」  暫しの後、リヒトが満面の笑みで答えた。 「え?」 「今シメオン先生に伝えたら、OKって言ってた」  シメオンは光属性がないので精神魔法までは使えない。しかし返答を伝える事は出来る。 「なんかよく分かんないけど、リヒトくん凄いね」  ジルが心底尊敬して答えると、リヒトは微笑んでいた。 「まあリヒトは能力は凄いからな、能力は」 「そうそう。童貞花畑だけどね」  二人の言葉に、リヒトは反論する。 「だから! 童貞花畑って言うな!」  それを聞き、ジルは尋ねた。 「どうていはなばたけ?」  リヒトが、凄い勢いでジルを見た。 「!」 「「ハハハ!」」  二人は爆笑した。ジルは言葉の意味を考え、何かに辿り着き、途端ボッと顔から火を噴いた。それを見て、リヒトも顔から火を噴いた。 「マジ、初心~!」 「二人共、かっわいい~!」  二人の言葉にリヒトは、再び反論しようとした。 「あ~の~な~!」  ジルは両手で顔を覆って俯いた。 「……!」  どうていって、童貞のことだ!  僕たちは番だから、いずれ……そういうことだよね?  僕たちが番って事は、僕たちはそういう関係なんだよって、みんなに公言している様なものなの?  ジルは一人で先を考え、心の中で悶絶していた。 「ジル! 童貞って言うのは……!」  慌ててリヒトが弁解を口にするが、ジルも慌てて被せてきた。 「あ、あの、あの! 大丈夫! 童貞って清らかってことだよね。リヒトはあの光みたいに清らかなんだよ!」  そうジルが言うと、ドニスとクレスが噴き出した。 「清らかっ? リヒトが? この煩悩花畑のリヒトが?」 「うっわ~! ジルさんピュアっ! ピュアすぎる! リヒトの煩悩が炸裂するのかっ?」 「おいっ! 誤解を招く発言はやめろよっ! いいんだよ、俺は清らかなんだよ!」  なんだか凄い賑わっているけど、今までこんなに楽しくて賑やかな事はなかったので、ジルは段々笑っていた。 「あはは! みんな面白いね! みんなと出会えてよかったよ」  その言葉を聞き、三人も笑った。 「いやいや、本当俺の方こそ出会えてよかったよ!」  リヒトも笑っていた。 「俺たちも予測のできない楽しみを分けてくれてよかったよ!」 「ただの毎日より、刺激のある方が楽しいからね!」  よし、頑張ろう!  自分の居場所をくれた三人に感謝を込めて、ジルは気合を入れなおした。
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