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「寒いけど、雪なんか降ってない……あっ!」 僕は大声をあげる。アパートの下に寒そうに身体を縮めている綾斗が立っていたのだ。携帯を耳に当てて、僕の部屋を見ている綾斗と目が合った。  黒いロングコートを着て、男らしい笑みを浮かべていた。あの笑顔に、僕は何度騙され続けたのだろう。  浮気ばかりする綾斗と、別れることもできず、僕の高校生活は終わった。好き過ぎて…他に女性が居ても、たまに僕を抱いてくれる綾斗に足を広げてしまっていた。 「どうしてここが?」 「龍原組の奴に聞けばわかる」 「そっか」と、僕は頷く。 「そっちに行っていいか?」 「うん。寒いから、早く温まりなよ」 僕は携帯を切ってから、窓を閉めた。 クリスマスイブに、綾斗と会えるなんて。僕はなんて幸せ者なんだろうか。好きな人と過ごせるクリスマス。まるで夢を見ているみたいだ。 「狭いな。靖明がここを用意したのか?」 僕の部屋に入るなり、綾斗が室内を見渡した。6畳のワンルームには、生活に必要最低限の家具と食器しか置いてなかった。 テーブルも一人で生活する分にはちょうど良い大きさだけど、男が二人で囲むには小さい。 (誰かと暮らすわけじゃないから、いいんだけど…)  来訪者がいるとやっぱり、狭さを痛感する。とくにそれが綾斗なら、なおさらだ。綾斗は規格外サイズだから。一般的な男性よりも身長がある。だから余計、一人で丁度良いワンルームが一気に狭くなる。 「ここは自分で探したんだ。靖明は大学近くのマンションを買ってくれるって言ってくれたんだけど……。四年間しか通わないのに買うのは勿体無いでしょ?」  僕は龍原組に居候している身だから。我がままは良くないし、甘えてもいけないと思ってる。靖明はいつも笑顔で、『平気』って言ってくれるけど、僕には肩身が狭い。  身寄りもなく、ヤクザの出世街道からも外れてしまった僕が贅沢できるはずもない。 「那津らしいな」  綾斗が口を緩めて笑った。 「大学に通わせていただけるだけで充分だよ」 僕は綾斗が座るところに座布団を敷いた。畳に尻をつけるのは、少し寒いだろうから。 綾斗が腰をおろすと、可愛らしいツリーに目がいく。僕がこういうのを飾るのは珍しい。綾斗も不思議に思っているのだろうか? それとも何とも思ってないかもしれない。 「コーヒーでいいでしょ?」  僕は綾斗の背後から、声をかけた。 「ああ」と綾斗の返事を聞いてから、僕はキッチンに向かった。玄関の隣がすぐにキッチンだ。 僕は手際よく、インスタントコーヒーをいれる。その背中を綾斗にじっと見つめられていた。 熱い視線が痛いほど背中に突き刺さってくる。見ないで欲しい。嫌でも身体が綾斗を求めてしまうから。 中学、高校と綾斗に慣らされた身体は、そう簡単に忘れられるはずがない。ふとしたきっかけで、思いだしてしまうんだ。 女性と浮気ばかりしていた綾斗だけど、優しかった。二人で過ごすときの綾斗は、僕だけを見てくれた。 きっと付き合ってきた女性にも同じような態度をとっていたのだろう。僕が知らないだけ。 綾斗は口が上手いから。嘘も、嘘だと思わせない言い方をするから、僕は浮気に気付けなかった。気づいてからも、何も言えなかった。言うのが怖かった。  僕は男だし。『若気の至り』と言われてしまえば、それまでの関係だから。浮気を続ける強く綾斗にあたれなかったし、僕が綾斗の恋人だとも確信できなかった。 「はい。熱いから気をつけてね」 僕はマグカップにいれたコーヒーを差し出す。綾斗はカップを受け取ると、少し口に含んだ。その仕草だけでも、様になる。格好良い。 (あ、首筋にキスマーク)
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