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 あっちに行くに決まってるじゃないか。女が抱けないってだけえで、歌うのを拒んだ子だ。女が抱けるなら、春臣についていったほうがいい。好きなだけ抱けて、歌もうたえる。  スキャンダルを抑え込めない俺たちじゃ……柚希に好きな女を抱いていいなんて言えない。 「桜庭さん、顔色悪いよ? どうしたの?」  衣装を着て、歌手の仮面をつけた柚希が俺の頬を優しく包んでほほ笑んできた。  低く甘い声が、耳に入ってくる。  この声が……この顔が……。また春臣に奪われる。 「あ……あっ……うっ、ゆ……あ」  膝ががくがくと震えだし、俺は急に声がうまく出せなくなる。柚希、歌ってこい、と笑顔で送り出したいのに。声も身体も、震えてしまう。  キラキラと輝く柚希のオーラが、大物になれると物語っている。柚希の才能のある歌声は、俺じゃない誰かのほうがきっとうまく引き出せるんじゃないか。でも渡したくない。  絶対に春臣には……奪われたくないんだ。 「あいつ、ほんにムカつく」と柚希が不機嫌な声をあげると、俺の唇にキスをした。荒々しく舌を割って入ってきて、俺をぎゅうっと抱きしめてきた。 「本番前だから、優しくできないよ」  柚希が俺のネクタイをくいっと引っ張ると、控室に逆戻りした。俺はテーブルに押し倒される。一気にズボンとパンツを引きずり降ろされると、ガッと股を開帳された。 「ゴムをつける時間もないから」と柚希が耳元で囁かれる。歌うために最高の状態になった喉で呟やかれる声が、やばいくらいに身体に快感を与えてくる。  正常位で俺と柚希がつながる。衣装の鎖がチャラチャラなる音と、柚希のリズムが重なる。最初から激しい付きに、俺は背中をのけ反らして痛みと快感を味わう。 「ん、ん、ん」とリズムと同時に声が漏れる。ビリっと尻に痛みが走って「ああっ!」と俺は声が初めてあがった。さっき切った切り口が、またキレたのだろう。 「もっと……桜庭さん、声、聴かせて。口、閉じないで」  柚希の指が俺の口に入った。閉じないように隙間をあけて、激しく打ち付けてくる。俺は「あ……ああ。んぅ、あああ」と嬌声がダダ洩れした。 「最高。その声、くる」  くるのは、こっちのほうだ。完成された声で、囁いてきて。完成されたその顔で快感に歪む顔を見せてきて。  いつもはバックなのに。向かい合ってるのは、反則だ。柚希のすべてが見える。 「あ……ああ。イぅ」と俺はビクビクと全身を震わせた。大きくなった雄をスッと柚希が手で包み込んだ。スーツを汚さないように手を出したのだろうが、逆に柚木の手を汚してしまった。 「僕も」と柚希の動きがさらに速さを増す。「……っあ」と声が漏れて、柚希が頂点に達したようだ。 「おっけ。間に合った」  柚希が控室の時計を見て、笑う。俺の体液で汚れた手をペロッと舐めて、俺の中から出ていく。 「……て、が……」  喉の奥に何か詰まっているかのように、声がうまく出せない。 「初めてイク時は手で受け止めたかったら。本当は口のほうが良かったんだけど。時間、かけられなかったから」  柚希が嬉しそうに笑っている。
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