『ラブ、大盛つゆだくで』 累計リアクション1000 over 感謝SS.。*゚+.*.。

いつも閲覧ありがとうございます。

小説『ラブ、大盛つゆだくで』の累計リアクションが

なんと、1000を超えました(!?)

ということで、感謝の気持ちを込めて再びショートストーリーを書かせていただきました。

1000…。1000って、すごい。

本当に、ありがとうございます!嬉しいです!!

連載はまだ続いているので、これからもよろしくお願いします♡

 

今回のお話は、第4章 ラブ、おかわり#1(P31)よりも

少しだけ前のストーリーになります。

未読の方は、そちらを読んでから閲覧いただけると

よりお楽しみいただけるかな? と思います。

本編の補足というか、おまけというか、何というか…。

相変わらず、バカップルの周りは平和です。

 

 

【お礼SSログまとめ】

 

●累計リアクション300 over 感謝SS

https://fujossy.jp/notes/22639

 

●累計リアクション500 over 感謝SS

https://fujossy.jp/notes/22992

 

●しおり100 over 感謝SS

https://fujossy.jp/notes/23141

 

 

それでは、どうぞ!

 

 

 

 

 

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「ねぇ牧さん。写真、撮ってもいい?」

 

「写真…? 別に、いいけど」

 

鳴海の働く、美容室『meteorite -メテオライト-』。
黒いクロスを外しながら、セット面の鏡越しに鳴海が牧に声をかける。
牧は今日、カットとカラーで訪れていて、その施術がちょうど終わったところだった。
いつも明るめのカラーを入れていた牧だったが、鳴海の勧めもあって、今回はアプリコット・オレンジという落ち着いた色に染めてもらっていた。
くすんだブラウンと赤みのあるオレンジを混ぜたようなその色は深みがあって、牧もすぐに気に入った。

 

「ちょっと待ってて。スマホ取ってくる」

 

鳴海はそう言って、奥のスタッフルームへと入っていく。
平日の夕方は空いている時間らしく、店内に他の客は見当たらなかった。
牧は休みだったのだが、こうして客として来れば仕事中の鳴海に堂々と会えるという下心もあって、最近は頻繁に来店するようになっていた。
鳴海が戻ってきて、早速カシャカシャと色んな角度から撮影していく。
てっきり2〜3枚くらいだろうと思っていたのに、何枚も撮り続けるものだから、牧は段々恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「鳴海…。そんなにたくさん撮る必要ってあるのか?」

 

「髪型とか、カラーの記録をしっかり残しておきたくて」

 

「そうなんだ…。なら、仕方ないな」

 

鳴海は仕事熱心だから、今後の参考のためにできるだけデータを残しておきたいんだろう。
そう牧が納得していると、鳴海は不意に構えていたスマホをすっと下ろして。

 

「……本当は。牧さんの写真を、保存したいだけ…なんだけどね」

 

照れた顔で、ぼそりと呟く。
鳴海の熱を帯びた視線が、牧のものと絡み合う。

 

「……っ」

 

なんだよ、それ。
ずるい。俺だって鳴海の写真、欲しいんだけど。今度会ったとき、絶対いっぱい撮ってやる。
頭の中でそんなことを考えていると、セット椅子をくるんと回転させられて、最後に正面の写真までカシャ、と撮られる。
ようやく鳴海の撮影が終わったらしく、そろそろ帰ろうと牧が立ち上がると。

 

「あーっ! 鳴海くん、牧くんの写真撮ってたの? いいなー、見せて見せて!」

 

「わっ、すごーい。やっぱ素材がいいと、絵になるねぇ」

 

受付カウンターで談笑していたはずの鳴海の先輩美容師の二人が、いつの間にか鳴海のスマホを覗き込んでいた。

 

「勝手に見ないでくださいよ。これは俺のなんで」

 

「え〜っ!? 鳴海くんのケチ!」

 

「あ、そうだ! 前にオーナーが、イケメンの画像をSNSに載せるように言ってたよね! 牧くん、今から写真、撮らせてもらってもいいかな?」

 

「え……。まぁ、俺は構わないですけど…」

 

牧が返事をすると、すぐに彼女たちに強引に引っ張られて、観葉植物の隣にある待合のソファ席へと座らせられる。
勢いに押されながらも、白い壁をバックに牧はスマホのカメラで何枚も写真を撮られていく。
なんか異様に二人のテンションが高くて、少し恐怖を感じる。
ちらりと鳴海の方を見てみると、離れた位置から困り顔で牧のことを見守っているようだった。
美容師の世界は年功序列のようで、鳴海はこのお姉さん方には逆らえないらしい。
やっとシャッター音が聞こえなくなって一息つくも、納得のいく写真は撮れなかったようで。

 

「うーん。どうも、表情が固い気がするのよねぇ。鳴海くんが撮った写真だと、もっと柔らかい表情してた気がするんだけど……」

 

さっきと何が違うのかしら、と画面を睨みつけながら唸る美容師A。
すると、美容師Bは「あ、わかった!」と何かに気がついたようで。

 

「さっきはあったのに、今は足りないもの。それはきっと、これよ!」

 

『これ』と言いながら、店の奥にいた鳴海の腕を無理やり引っ張って撮影会場となっている場所まで連れて来る。

 

「え…? 俺も、写真に入るんですか?」

 

「そんなわけないでしょ。鳴海くんは、そこに立ってるだけでいいの」

 

戸惑う鳴海を無視して、美容師Bはその背中をドンと押して、牧の目の前に鳴海を配置する。
ソファに座る牧の視界には、鳴海の姿しか映らなくなって。
まるで二人きりの世界にいるみたいで、牧は胸の鼓動が少しずつ大きくなっていくのを感じた。

 

「そう、これなのよ! この顔が撮りたかったのよ私は…!」

 

「物欲しげな牧くんの表情、色気があっていいわぁ」

 

二人はキャーキャーとはしゃぎ、早速撮れたてホヤホヤの写真をSNSにアップロードすることにしたらしい。
もはや用済みとなった牧は、「疲れた…」と大きな息を吐いて。

 

「……なぁ、鳴海。俺たちがつき合っていること、職場に話してたのか?」

 

「いや…。一度も言った覚えはなかったんだけど……。なんか、バレバレだったらしくて…」

 

「そうなんだ……」

 

 

 

後に、牧のその写真は「妙に色気がある」と予想以上の反響があり。
「こんな髪型になりたい」ではなく、「こんなイケメンになりたい」とオーダーする若者の予約が後を絶たなかったという…。

 

 

 

 

 

【連載中】『ラブ、大盛つゆだくで』(※R18)

https://fujossy.jp/books/17547