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「お前、あんな事してバレたらどうするんだ。 天下の零士様が暴力沙汰とか、ワイドショーのトップになるぞ」 「大丈夫。事務所が揉み消してくれるから」 「怖ぇーよ!」 ワイドショーのトップ、揉み消すとか、どんだけ力があるんだよ。 「くくっ。怖くないって。普段は皆、穏やかだけど、そういう時は一致団結、物凄い連携プレーを見せてくれる。一応、稼ぎ頭だから事務所には大事にされてるんだ。心配いらない」 「あんな奴、無視して良かったのに」 「我慢できなかった。あぁいう奴、嫌いだし」 怒ってくれてスッキリした。 「…………怒ってんの、初めて見た」 「あれは普通、誰でも怒る」 自分の事みたいに怒ってくれて、ちょっと感動した。庇ってくれてありがとう…… 『汚くない。綺麗だ』、そう言われて嬉しかった…… でも、なんとなく言葉が出ない。 「ごめんな。レキ。やっぱり、ケータイ、一緒に取りにいけば良かったな」 「別に。本当の事だし……」 思わず声が小さくなり、下を向く。 「…………お前は綺麗だよ」 「やめろよ。恥ずかしい奴だな!」 「照れんなって」 「照れてない!!」 「く、くく……じゃ、なんで顔赤いの?」 「この野郎。ゲーセンでコテンパにしてやる」 「ふ……はっ、ハハッ」 「……いつまで笑ってんだよ」 さっきまでの嫌な気分が嘘みたいだ。人に受け入れてもらう……って、こんなに心が楽になるのか。中学の親友に犯された日から、上辺ばかりで親しい友人を作らないようにしてたから…… 街角に溢れる零士のポスター。 本屋には何冊も表紙を飾った雑誌。 沢山の人を魅了するトップスターが俺に付き合って、ゲーセンに行く。 ………………本当に変な奴。 「俺が勝ったら、ヤッてる時の声、録音させて?」 零士がとんでもない事をぬかしてきた。 「は、はぁ!?させるわけねーだろ!」 「ふーん。自信ないんだ」 「…………なんだと?」 「自信あるなら勝負しろよ」 「お前、ゲーセンとか行かないだろ」 「うん。初めて」 「じゃ、俺が負けるわけねーだろ!!」 「ゲームは分かんないけど、スポーツは得意」 「…………この野郎、後悔させてやる」 「そうこなくっちゃ」 言い合ってるうちに、車は目的地に着いた。

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