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21【王殺し】

 そして夜が訪れ、王都は闇に包まれる。人々が寝静まる時間帯まで待って【王殺し】は王宮への接近を開始した。  幸い獣の目は闇の中でも遠くまで見渡せる。王を殺すという目的について言うのであれば、人の姿よりも獣の姿で試みるのはずっと理屈にかなっているようだ。  王宮の回りは堅牢な塀に囲まれていて、いくつかある門も固く閉じられている。広大な敷地の外をぐるりと一周してみるが、くぐり抜けられそうな場所も飛び越えられそうな場所も見当たらなかった。  【王殺し】は落胆したが、辛抱強く裏門の様子を伺っていると、やがて一人の衛兵があくびをしながら門の外に出てきた。どうやら用を足すことが目的だったらしく、衛兵は堀に向かって立ち小便をはじめる。  ここぞとばかりに【王殺し】はするりと門の内側に入り込んだ。  目の前には広い庭が有り、庭の先には宮殿がある。昼間にも目にしたはずだが、夜の闇の中で見る宮殿は異様に大きく見えて【王殺し】は圧倒された。  こんな広い建物で、一体どうやって王の居室を探せば良いのだろう。どうにか建物の内側に入ったとして、王を見つける前に朝が来たらきっと人に見つかってしまう。  幸い【王殺し】の足先は柔らかく、体は黒い。爪を立てないよう気をつければ夜のうちだけは人に気づかれず動き回ることができる。どうにかして日が昇る前に王を見つけ、仕留めなければならない。  【王殺し】は建物の高い場所にあいている換気用の窓を見つめ、強く願った。あそこから、宮殿の中に入りたいと。  ふっと体中の力が抜け、黒く醜い獣の体がばらばらに砕けるような気がした。  老婆の言うことは本当だった。【王殺し】の体は黄金の雨となり宮殿の窓から内側に降り注いでいた。

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