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第12話 蜜月(ハニームーン)は薔薇の花びらを添えて12

「あぁ……なんてことだ、ミリアム……」  思い返せば、確かに枕元にはインヴァネス侯爵の衣服が無造作に並べられていた。  ――無自覚でやっていると思っていたが、違ったのか……。 が、ミリアムにとっては“巣”だったのだ。  身近にΩもαもいなかったミリアムが、本能で懸命に拵えた“巣”だったのだとわかると、愛しさが次から次と溢れ出た。 「――本当に、申し訳なかった。お前の気持ちを考えずに、傷付けてしまったね……どうか、わたしを部屋に入れておくれ。謝罪がしたい」 「いやっ!!おれが出来損ないのΩだから、巣を壊しちゃったんでしょう…… オーガスタスさまなんて、大っ嫌い!!」  ミリアムへの隠し事が多く、二人の関係がぎくしゃくしていた時でさえ、“大嫌い”などと拒絶されたことはない。  ミリアムは発情期(ヒート)で正気を失っているとはいえ、インヴァネス侯爵は、心臓がもぎ取られるような痛みを感じた。 「……酷いことを言わないでくれ。わたしはこんなにも、お前の愛を欲しているというのに。泣いてしまいそうだ」  誇張ではなくインヴァネス侯爵は、頬を伝う涙を止めることが出来なかった。  ――わたしは何をやっているのだろうか? と、情けなく思う気持ちもないではないが、どうにもならない。 自身のΩに嫌われては、生きてゆけないと思い詰める。 「オーガスタスさまは、おれをお嫁にもらったことを、後悔しているんだ……おれの発情期(ヒート)に巻き込まれて、(うなじ)を咬んじゃったわけだし……おれに、おちんちんあるのが嫌なんでしょ!!本当は、女性Ωの方が良かったんでしょ!!赤ちゃんなんか、欲しくないんでしょ!!だから、お風呂場で精液を掻き出しちゃったんでしょ!!」  ミリアムは言いたいだけ叫んで、わーっと泣き出してしまったようだ。  インヴァネス侯爵の心境は、番の片割れに拒絶されているという悲しみと、可愛くて仕方がないという気持ちがない交ぜになって破裂しそうである。  ミリアムを娶ったことならば、後悔などするわけがない。 望んで、焦がれて、ようやく手に入れた 運命 なのだ――  寧ろ、ミリアムをこの屋敷(《スブ・ロサー》)に連れてくるまでの一切合切(いっさいがっさい)をつまびらかにしてしまいたい気がするが―― インヴァネス侯爵がどれだけ手段を選ばず、いかにミリアムに強い執着を抱いていたかなどという物騒な話になるので、とても聞かせられない。

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