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第28話 72%

「な、ん、りぃーっ!」  ブンブンと腕を振り回して、細川が道の向こうからやって来た。おれは大学の図書館から出てきたところだ。 「おー」  短く挨拶し、細川の横に並ぶ。 「お前のお陰で、解析がめっちゃ捗ってるぞ」 「マジで。良かったじゃん」  シンエンさんにアプリというアイディアを貰い、早速作成したらしい。アプリを登録するには審査がいるので、時間の都合でツイートリーに連携できるアプリにしたようだ。順調にデータが集まっているらしい。 「今のところ正解率七割。心理学に詳しい他所の大学の子とかも交えてさ、ちょっとしたプロジェクトよ」 「噛めて嬉しいよ」  差し出された手を、パンと叩く。細川は嬉しそうに、「学食奢るぞ!」と、おれを食堂に連れ出した。  ちょっと前はご馳走だった学食も、野上さんの飯を知った後だと、少しだけイマイチに思える。勿論、値段が安いのだから、文句はないが。 「ニンジンやる」 「いらねえよ」  細川が寄越したニンジンを押し返し、カレーを口に運ぶ。ポークカレーか。後で作ってみようかな。 「俺さあ。ちょっとっていうか、かなーり、お前のこと心配してんだけど」 「知ってるよ」  改めて言われなくても、細川がおれを心配してくれてるのは、十分解っている。今だって、お礼の名目で飯に誘ったんだろう。 「お前、本多教授に狙われてんじゃん」 「そいつの名前は出すな」 「あはは。ホラ、知り合いのおじさんに―――って、言ってただろ」 「ああ……」  手を止め、水を飲んだ。  細川が、じっと見てくる。居心地が悪い。 「あれさあ、自暴自棄になったんかなーって、スゲエ心配したわけよ」 「……半分はそうだけど」 「そればかりじゃないだろ。ホラ」  スマートフォンの画面を、細川が向ける。おれの顔写真と、七十二パーセントという文字が、表示されていた。  嫌な予感に、顔を背ける。 「恋診断の精度、マジだからな。お前、ちゃんと好きだったんだ」 「―――うるさいわ」  ブスッと口を膨らませ、テーブルの下で細川を蹴った。 「俺は南里のこと、よーく分かってるからな。お前のことだから、『初めて』を好きな人と出来れば、あとはどうってことないと思ったんだろ」  見透かすな。ヤメロ。 「で? どうだ。結局ダメだったろ? そもそも、好きな人とじゃなきゃ嫌だってロマンチストが、出来るわけねーだろ」 「だって先輩やってた」 「お前とはタイプが違うの。合コンパーティーとかでやれちゃう人なの」 「おえ」 「吐くな吐くな」  細川は笑いながら、ニヤニヤしながらおれを見る。ムカつく。 「別に、そんなロマンチストじゃない」  ボソッと、言い訳じみた言葉を紡ぐ。  確かに、最初は好きでもない人とやるのは嫌だって、そう思ってたけど。野上さんが、そういう意味で好きだったかなんか、解らない。  おれの『好き』は、すごく小さな種だったのに、野上さんが水をあげて、育ててしまったんだ。 (こんなに好きに、なるはずじゃなかったのに)  ムスっとしたまま、カレーをかき混ぜるおれに、細川は笑みを浮かべる。 「んで、オッサンと仲良くなって、今じゃ店長とバイトの関係なんだろ? 告白はすんのか?」 「わかんない」  多分、突き放されることはない。諭されることはあると思う。  想像できる。 『君は若いんだから』 『もっと他にいる』 『ちゃんと将来を考えて』 『若さの勢いで、決めちゃダメだよ』  その言葉を聞きたくない。 「関係を壊したくないとか?」 「むしろ、ぶっ壊したいわ」  終わりが怖い。  だって、おれが社会人になって、あの場所に行く理由がなくなったら。  もう、逢えなくなってしまいそうで。  

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