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「具合の良い体だ 君なら新しい情夫も直ぐに見付かるだろう」  そんな事を望みもしないのに口にすれば 「僕の体は 貴方だけの物ですから」  項垂れる彼は其れでも堪える表情に薄く微笑を浮かべたままで 「云えて清々したよ もう 此所には来ないから」  小さな衣擦れの音を背中に聞きながら戸を閉めた  ざわと駆け上がる悪寒は 酷い火傷を負った時の其れと似ていた  ひ と背後から 泣き声が聞こえた瞬間 立って居られない程の震えに思わず座り込んだ  自分が彼に何を告げたのか 咀嚼して飲み込む事が出来なかった 「は  」  喘いで空気を取り込み震えの治まらない手で胸を押さえる  此れで 彼は俺に愛想を尽かしてくれるのだろうか、  破鐘の様に騒ぎ続ける胸の音に耳を塞ぐ  畜生に堕ちても良いと云った彼が 此れで離れてくれるのか、  赦しが出たのだから 堕としてしまえと 燻る体の熱が叫ぶ  転がる様に工房へと入り 彼の香りの残る手で其の熱を消そうとしたが 埋火は何時まで経っても消える事は無かった

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