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「あれですか、先生が南川画伯の絵を集められているのは 霍公鳥だからですか、」  は、と返す  父親ならば兎も角 此の若い奥野は曾て俺が翠也の屋敷に厄介に成っていた事を知らない様だった 「いやぁ だって 先生の卯って卯月鳥の卯でしょう、だから其の鳥の得意な南川画伯の絵を集められているのかとばかり」 「卯月鳥、」 「あれ、霍公鳥の別称ですよ」  きょとんと返された言葉に何かが腑に落ちた  川蝉と霍公鳥  川蝉  翡翠  翠だ 「翠也 」  ふっと吐いた息が吸い込めなかった  川蝉も霍公鳥も 翠也は好きだから描いたのでは無い 「君と 俺だからか 、」  公に出来ない関係の せめてもの縁に、  そう思うと 腰が抜けた様に立って居られなくなった 「先生っ、大丈夫ですか、」 「そ んな 」  呆然と呟く俺に 医者を呼んで来るからと奥野は飛び出して行った  其れを見送り 翠に手を這わせた 「此れは 霍公鳥では無く 俺だった のか、」  ふと 懐かしい顔を思い出した

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