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 川蝉と霍公鳥と云った時の 玄上の表情  彼奴はきっと あの時気付いたんだ 「は  はは 」  気付かなかったのは俺一人、  何故あの時に描いて渡してやれなかったのか  壁に掛けられた川蝉と霍公鳥を見上げる  亡くなる直前に書かれた作品も 川蝉と霍公鳥だ  彼は妻を娶ったとしても 俺の事を忘れたりなんかしていなかった  翠也はずっと 俺を思って居てくれた、 「此れは 」  手の中の画布の裏に書かれた文字  獣ならば ただ 月の照らす道を共に飛べたのに 「  」  獣ならば、  畜生に堕ちたいと願った翠也 「君は  知ってたのか、」  ざわと駆けた悪寒に身を竦める  あの男の事だ 何かの拍子に翠也に俺達の関係を云ったのかもしれない  定かでは無い  定かでは無いが 畜生に堕ちたいと願ったあの言葉は  翠也の覚悟だ  俺は其の覚悟から逃げた

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