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第3話

 17日のカミル生還事件から一週間。  ゲイルやカミルは積極的にプレイヤーと会話を試み、調査ノートが埋まると自動翻訳されるシステムに気づいたプレイヤーももちろん積極的に会話する。  話題は山ほどある。外のこと、ダンジョンの中のこと、魔法のこと、科学のこと……。  そう、だからゲイルとロイドが会話するのは仕方のないことなのだ。  仕方のないことだけど、なんとなくそれが嫌だった俺は、ロイドにめちゃくちゃ雑用を頼んだ。ゲイルとカミルの外出要請を突っぱねつつ、全てから目をそらして雑用をこなしていた俺が異変に気づいたのは、掃除当番のときだった。   「な、なあ、ロイド……言いにくいんだけどさ。おかしくない? 一週間前もこうだったっけ?」 「何がだ?」  俺は戦々恐々として、かなりオブラートに包んでいった。   「それは、その……あれだ」 「どれだ?」  ロイドは鈍いんだろうか。それとも優しさだろうか。俺がエッチなのだろうか。  そう、尻である。尻の穴がおかしい。縦になっている。   「あっ カミルっ こんな場所で……」 「あはは。誰も見てませんよ。私の幻術で……」  風呂場になだれ込んできた二人がおっぱじめる。  あはんうふんなことをだ。 「ろ、ロイド……」 「ああ、何だ?」  俺はロイドをガン見した。 『名前:ロイド  種族:ヒューマン  状態:幻術』 「お前か―!??」  俺はカミルにモップで殴りかかった。  ケツを叩かれたカミルは白濁で掃除したばかりの床を汚した。 「ふっざけんなよ! ふっざけんなよ! ふっざけんなよ!」  俺のGM的ぱぅあーで病欠の一人を除いて全員を正気に戻す。放心状態の奴ら、真っ赤な顔を隠す奴ら、ごろんごろんのたうち回る奴ら。  良かった。俺のロイドの尻が無事で、本当に良かった。いや、俺のではないのだが。  ゲイルとカミルを正座させ、俺は激おこぷんぷん丸カムチャッカファイアーする。  そういえば、カミルは攻撃系だけでなく、幻惑系を使える設定だった。不覚。不覚!  だから、GMの力を解禁は仕方のないことなのだ。  常識改変系洗脳をリアルでされてはたまらない。 「幻術で惑わせて片っ端から手を出すなど、言語道断! エッチなのは駄目! 駄目なの! 次やったらマジで追放するからな!」 「種族の繁栄は義務だ。ここには食事があり、メスが「メス言うな!」」  ゲイルは駄々をこねる子供を見る目をした。 「……力はあるようだが。君のような者がこの美しき者達の長など、信じがたい」 「なにおう!」 「大人には大人の営みがあるのだ。子供にはわからぬだろう」 「むかつきすぎて憤死しそう」  お前が! お前が俺の子供なのですぞ! 「まあまあ、確かに色恋は好きにして良いはずだ」 「ロイド!」  ゲイルたちに味方するようなことを言われてギョッとなる。 「だが、幻術を使ったらそれは恋愛じゃなくて、侵略っていう。複数に手を出すなら尚更だ」 「ロイド……」 「俺たちの所は一夫一妻制って言ってな、男一人に女一人がくっつくのが普通なんだ。同性カップルもいるっちゃいるが、少ないし、浮気は罰せられるな」 「不条理な……」 「そうかもな。でも、そうなんだ」  さすがロイド。真の廃人はコミュ力も高い。コミュ力が高くなくてはレイド戦で戦いきれないからな。落ち着いた青い瞳の眼差しに惚れそう。 「皆に謝ること。それで、一人に絞って告白すること。それが出来ないなら、出ていってもらおう」  そこで、携帯が鳴った。病欠のキャラネーム トール、本名安藤 透という、可愛い系のゲームキャラの子である。最も、可愛い系……というか、線の細い女の子のような美形は多い。スターオンラインはSF。つまり頭脳戦が主。必然的に、そういう画風でまとめられたのである。 『あっ 社長? ゲイルいる? あのね♡ 僕♡ 妊娠したんだ! ゲイルの赤ちゃん産んじゃうんだぁ♡』  頭があっぱらぱーに改変されたままの男の衝撃的な発言と、その向こうの病院の大変な騒ぎが聞き取れる。  男が妊娠したんだもん。そりゃそうだろうよ。  俺は表情の抜け落ちた顔で言った。 「お前の相手決まったわ。責任取れよ、ゲイル」  ドン引きした男たち。青い顔をして口元を押さえるのも何人か。 「えっと、複数妊娠させた場合は?」  カミルがいうが、そんなの決まっているじゃないかぁ。 「処す」 「落ち着け! 落ち着け、社長!」 「社長を止めろ―!」  そんなこんなで、なし崩しにマジ狩るオンラインが明るみに出たのだった!

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