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 憤然と立ち去った少年を、レヴィンは見送っていた。  叩かれた頬を手で抑え、笑みをこぼす。 (なるほど。ここで愚痴ってばかりだったから、とんだへたれなガキだと思いきや……意外と芯はあるようだな)  レヴィンは先ほどの少年の表情を思い出した。堂々と啖呵を切る姿。あの顔はなかなかよかった。 (ま、いいさ。どうせしばらくの間、天上世界(アスガルド)には帰れないんだ。暇を持て余すよりは、楽しく過ごした方が有意義だ)  セシル・バルト。  少年の名前を舌の上で転がす。  『能無し』で『落ちこぼれ』……だが、人間にしては珍しく、1本の芯が通っている。おもしろいと思った。 (あの小僧でしばらく遊んでやるとするか)  レヴィンは金色の双眸を光らせ、薄く笑う。  それは獣のような獰猛な笑みだった。

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