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「では、先生。また」 「午後の授業もがんばってくださいね」 「はい」  昼食を終え、2人は廊下で別れる。  セシルが歩き出したので、レヴィンは少年の後ろに続いた。  と――その時だ。  レヴィンは不穏な視線を感じて、顔を上げた。  フェルナンドがセシルの後姿をじっと見つめていたのだった。  穏やかな表情が鳴りを潜め、まるで品定めする目だ。それは一瞬のことで、フェルナンドは逆方面に立ち去る。レヴィンはその視線を不審に感じた。 (何だ、あの目付きは。さてはあいつ、小僧のことをそういう目(・・・・・)で見ているということか?)  じっとりと絡みつくような視線。それは性的な匂いを感じさせるものだった。  そんなにそそるもんかねえ、とレヴィンは思った。  セシルの後ろを歩きながら、その体つきを観察する。  レヴィンからすれはまだまだ乳臭いというか、発達途中の体だ。小さくて細くて、色気が足りない。だが、色で例えるなら真っ白だ。まだ何者にも汚されていないことがわかる、清楚かつ無垢な様。  ミルクのような肌はなめらかで触り心地はよさそうだ。腰つきはほっそりとしているが、その反面、臀部は衣類に包まれていても丸みを帯びていることがわかる。 (うーむ……確かにいい尻してんな)  セシルは黙っていればかなりかわいい。  儚い見た目に対して、気は強いようだが……と、目線を上げてから、レヴィンはハッとした。  セシルがこちらを振り返っていた。目が合うと赤くなる。両手でばっと自分の尻を隠すと、怒りに打ち震えた。 「いや、これはそのな……」  レヴィンは言いかけるが、誤魔化す言葉が思い付かない。  そこで最終手段に出ることにした。  床の上でころりんと転がって、無垢な眼差しを向ける。「くぅーん」と甘える声を出す。秘技・かわいい子犬のふりで見逃してもらおう作戦である。  だが――少年の目付きは和らぐどころか、鋭さを増すばかりだった。  セシルは大きく息を吐き出すと、脚を振り上げる。 「この……アホ犬! エロ犬!」  そして、容赦なくレヴィンの体を踏みつけにするのだった。  『何でフェルナンドのいやらしい目には気付かないのに、こっちは気付くんだよ!!』とレヴィンは思った。

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