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四十八話 シャワーに濡れて

『どうしたら良いと思いますか?』という言葉に、本当に困ってしまった。康一が俺に答えを求めていることの真意を、汲めなかった訳じゃない。どうするのかを俺に委ねた結果だ。そんな風に言われて、拘束しないという選択は選べなかった。それを選んだら、拒絶したのと同義だ。康一は解っていて、俺に選ばせたのだろう。  拘束するのが、普通のセックスだとは思っていない。特殊性向の部類だろう。これからも続けるのか、その判断を委ねられたに過ぎない。  気がつかない振りをするほど、器用じゃなかった。康一が望むならしたいし、俺自身も康一に囚われていたかった。  つまり、頷くしかないわけで。  結果として俺は「コンビニになにかあるかも」と口にしていた。実際にあるかないかは、どっちでも良いのだ。大事なのは俺が同意したとう事実だ。だからその時点で、ミッションはコンプリートだったと言える。なのに何故俺は雑貨棚のコーナーでガムテープを見つけて、「これとか、……どうです、か?」と熱っぽく聞いてしまったのか。 「ガムテープって言ったの、寛之さんでしょう?」 「そっ、それはっ……」  グッと息を詰まらせ、康一を見下ろす。康一は鼻唄でも歌い出しそうな機嫌の良さで、カミソリを動かした。シャワーに流され、排水溝に毛が流れていく。 「っ、そこ、は、関係な……んっ」 「勃っちゃいましたね。興奮してます?」  挑発的な表情で見上げる康一を、カッと目元を赤くして見返した。  興奮、するだろう。こんな状況。 「く、あっ……」  敏感な部分を撫でられ、ゾクゾクする。 「康一、さっ……」  康一の肩を握り、何かに堪えるように力を込める。脚が震えて、崩れ落ちそうだ。まだ何も始まっていないというのに、このままイってしまいそうな快感が脳を犯している。  ジョリと最後の毛が剃られ、排水溝に消えていった。温いシャワーが泡を流し、剥き出しになった性器を康一の目の前に突きつける。康一は先端を指先で摘まむと、鼻先が掠りそうな距離でじっくりとチェックする。 「ん、ふぅ……んっ」 「キレイに剃れましたね」  繁みの消えた自身を見下ろす。失くなってしまっただけで、こんなに恥ずかしいなんて。本当に隠すものがなくなって、無防備に晒されている。  ハァハァと荒い息をしていると、康一がおもむろに先端にキスをした。ぢゅうっと吸われ、ディープキスのようにねっとりと舌が舐めあげる。痺れるような快感に、ビクビクと腰が揺れた。 「ひぅ、あっ!」  先端の穴を舌先を捩じ込むように舐められ、ビクンと腰が揺れる。迸る粘液を啜る音に、顔から火が出そうになった。次は飲ませてくれという宣言を思い出す。 「っ、あ」  止める間もなく、康一の口に性器が呑み込まれていく。生暖かくぬるぬるした咥内の気持ち良さに、甘い吐息を吐き出した。根元まで咥え込まれ、また鈴口まで引き抜かれる。舌と手で愛撫されながら吸われれば、あっという間に限界が来てしまう。 「あっ、あ、康一っ、さ……」  涙目で限界を訴えると、康一は根元を押さえて唇を離した。「え?」と思っていると、意地悪な笑顔で俺の手を取り根元を押さえさせる。 「っ、あの」  ハァハァと息を弾ませながら、言われるままに根元を押さえる。 「可愛くてつい食べちゃいました。途中でしたね」  そう言って、いつの間にか床に落ちていたカミソリを拾う。 「っ、イっちゃ……」 「ダメですよ。そのまま、待ってて下さいね」 「っ、む、ムリですっ……」  イきたい。こんな状態、ムリだ。今すぐ押さえている手を使って、達してしまいたい。 「ダメです。今日は飲むって言いましたよね? だからイったりしたら―――お仕置きしちゃうかもしれません」 「っ……」  ビクッ、肩が揺れる。  聞き慣れない言葉に、ゾクゾクと背筋が震えた。何をされるんだろう。何が待っているんだろう。  好奇心と被虐心が、ジワリと胸の奥に染み出した。  指先が、無意識に緩む。 「―――っ、ふ、は―――」 「―――……」  白濁が、康一の濡れた黒い髪にかかった。その光景が、美しく妖しく映る。 「は、あ……、はぁ……」  康一が顔を上げた。  前髪の隙間から見えた表情が、罠にかかったウサギを狩る狩人のように見えたのは、気のせいだろうか。

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