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「何、親父みたいなこと言って……、んっ……」  言葉の途中で、蘭はぴくりと躰を震わせた。陽介が、蘭のうなじの噛み痕に口づけたのだ。 「この痕。君は、俺の番だ。俺のものだ……」 「止めろって……」  振りほどこうとするが、陽介はますます力強く抱きしめて、離そうとしない。ダメだ、と蘭は思った。これ以上陽介に触れ続けていたら、躰がおかしくなりそうだ……。 「……服が、しわになる」  蘭はようやく、それだけを言った。そのとたん陽介は、蘭をくるりと振り向かせた。 「なら、脱げばいい」  言いながら陽介は、早くも蘭のネクタイに手をかけている。蘭は焦った。 「何すっ……、自分でやる!」 「さっき、俺が選んだ服を着せたいと言ったが……」  蘭の言葉を無視して、陽介が言う。 「脱がせる方が、ずっと楽しいな」 「この、エロ親父……」  陽介は、手早く蘭の上着を、ネクタイを取り去り、傍にあった長椅子に放り投げる。続いてシャツのボタンを外しながら、彼は涼しい笑みを浮かべた。 「聞いたことないか? 男が服をプレゼントするのは、脱がせるためだって……」 「それって、女に贈る場合じゃ……、んんっ……」  口づけで、悪態を封じられる。するりと潜り込んできた手に胸の飾りを摘ままれ、蘭は声にならない喘ぎを漏らした。  ――欲しい。目の前のアルファが……、いや、陽介が……。  ようやく唇を離したかと思うと、陽介はいきなり蘭を抱き上げた。 「――! 何すっ……」 「この長椅子じゃ狭すぎる。もっといいところに連れていってやろう」  鏡プレイも悪くないけれどな、などといいながら、陽介は衣装部屋を出た。そのままずんずん歩いていく。一番奥の部屋にたどり着くと、陽介は蘭を抱いたまま、器用にひじでドアを開けた。十畳はあろうかというその部屋には、キングサイズのダブルベッドがぽつんと置かれていた。他には何も家具がなくて、それが妙にいやらしい。 「細々したインテリアの手配は、さすがにまだだ。蘭の意見も聞きたいしね」  陽介は、やや言い訳がましく言うと、蘭をベッドに下ろした。
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