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「どう…して、どうして…」 震える声が部屋に響き渡る。 前世で果たせなかった事を今、果たす為。けれど、慧に説明した所で意味を為さないね。 だって、君は“四百四十年”前に生を成し遂げた事すら知らない神だから。 遠い昔の水輝國を目にした事すらない現代の若者。“僕”より短い時間しか過ごしていない若い神が過去の失態を知る由もないだろう? 「―…世界なんて狭いものだ。モノクロに塗ったって赤く染まる…。そうでしょう?僕達兄弟妹が知っているのは、赤く、生臭い源だ。違う生活等、送れる訳がない。長年と培ったシミはこびれ付いて。聞こえてくるかな一生、落ちる事がない印だ…」 “僕”にも君にも酷く、こびれ付いている真っ赤な血液。 拭えるどころか、生涯拭う事すら叶わない烙印。 少年は、饒舌な話し方で喋りながら、妖しく微笑う。 彼が言い様に、実家は、少し、特殊な家系。『殺戮神』として、育て上げられるのが、普通。 其処に、脱落者が居るとすれば、今の総帥である祖父に殺されるだろう。 それを、男性は、知っていた。 知っていたからこそ、家を飛び出したのは、言うまでもない。 兄が居なくなって、全てが変わった。四十年前のスタイルさえ、残っていないのは、祖父が深く関わっているからだ。 今でも鮮明に覚えているのは、兄のスタイルという名の見えない掟みたいな物。 『殺戮は、美しく殺るのが基本。何れだけ、四肢をバラバラにして散らしてあげられるかは、本人の腕と、知性の問題。あんな風に、能がない者みたく、汚い散らせ方は…相応しくない。生きている価値が無いから、楽にしてあげよう。そう、基礎は…ゆっくりと、息をしながら…呼吸と、吐息と、心拍数に合わせて…』 彼が、教える殺戮のスタイルは、実に、解りやすい。 まるで、呼吸そのものみたいに生きている。

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