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大きな組織という家系のごく僅かな者だけが殺戮神として選ばれる。
例えば、四十年前、皆を恐怖に陥れた兄とか。今では美しくなっている弟妹。
徹底的に叩き込まれたプログラムは劣る事なくインプットされている。
嫌な習慣だと心で悪態を付いても、頭で考えるより先に身体が勝手に動いてしまうから仕方ない。
苦痛を与え、死に絶えていく者達を見ながら、優越に浸るのも酔狂だと馬鹿な親族も中には居るが。“男性”の中では全然違う。
あれは、殺す瞬間に魅せる表情が良いのだ。
美しく、恐怖に満ちた眼が必死に懇願するんだよ。
「…三神帝は少し特殊でねぇ。血さえあれば、再び現世へ誕生が出来る。慧…俺は君の子として転生した。それは、ね…今の三神帝を掃除する為だよ」
思わぬ科白が、息子の口から放たれた。
今、彼は何と、言っただろうか。
『三神帝の掃除』と、はっきり言った様にも聞こえた。
それは、四十年前、出来なかった祖父と異父弟を、始末するという意味で、捉えて良いものか、慧弥は、悩んだ。兄なら、確実に、息の根を止めるだろう。
あれだけ、反対されていた恋愛が、関わっているのだから、腸が煮えていても仕方ない。
ふっと、若き頃の兄の姿を、思い浮かべた。
殺戮には、厳しくっても、家に居る時は、弟妹想いの一面がある。
窓の外を覗く姿は、何処か、切なく、哀愁、漂う感じの雰囲気があった。
童顔な顔の為に、二十歳過ぎと、言っても、十代に見えてしまうのが『三神帝 隗斗』だった気がする。
『僕の顔を見たって、何も出たりしないよ…』
少し、困った表情をした“彼”の口癖だった。
『慧…気にせず、外で、遊んで来て良いんだよ…』
優しく、温かな手で、背中を押され、恥ずかしかった幼き頃の姿。
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