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くすりと笑えば、彼は少年の前に膝を付いた。近くで眺めれば『大人になったな』と、“男性”は、実感する。 「掃除って…お祖父様を…綵竝を…殺すの?」 「…」 軈て訪れるであろう悲劇に向けての口実ではあるけど、野放しにしているのもいけない気がしてきた。 四十年という猶予は少し永すぎたか。 暫し、黙り込んで考えていると、勢い良くドアが開いた。 「咽鬼っ」 慧弥が傷だらけの夫の元へ駆け寄る。 「慧っ………隗を連れて…逃げろっ…」 自分から振り撒いてしまったので、老い耄れにも行き届くのは早いと思っていた。 思っていたけど、誰がコイツをズタボロにして良いと言った。 余計な仕事まで、増やしやがって。 「―…父様ぁ」 あぁ、自分が気色悪い。 コイツに向かって『父様』って…。 そんな事を、心で、思いながら“彼”は、父親を見つめた。 慧弥の家系…。 つまり、少年の実家にもあたる『三神帝』の、仕業だという事は一目瞭然。 男性を、傷付ける事が出来るのは、言わずと知れている。異なる瞳が、昔を懐かしむ様に、閉じるのであった。 この、切り口、甚振り方、剣の特徴からいくと、間違いなく、弟。術系は下手でも、剣術だけは長けているのを、隗斗は、知っていた。 仮にも、父親は『緋神帝』の総帥だ。 普通の家臣だけで、此処まで、傷付ける事すら、出来ないだろう。 “僕”が、折れて、やっと、慧弥と、契りを交わした男。 昔から…。 生け簀か無いが。 これでも、配慮してやっているんだ。 なぁ…。 巫麒。 ふんわりと、広がる世界に、四十年前の弟が映った。 末弟とは違う、別の意味で…。 ちょっと、おっちょこちょいな性格をしている三男。 女顔ってよりは、中性的な顔付きが、特徴。『三神帝』の血を引いている証とも云えるサラサラな金髪の髪に、紅い双眸。

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