なぁ、これが醜い幕の開きだとしたら慧。君は“僕”を恨むだろうか。 三神帝という争いが絶えない家系に生を成し遂げてしまった事を後悔しただろう？ 理想とはあくまで理想にしか過ぎないのさ。 現実は何時だって、血みどろな世界。 『―…隗斗っ』 どんな理由があろうと“僕”は、弟に残酷な舞台を用意してしまった。 慧が、決して、知りはしない秘密の一つだ。互いに真っ赤な鮮血で、染まった同士が辿る応えなんて最初から用意されている。 無秩序なバランスを保ちながらも、崩れる事せず、不器用に組み立てられているもんだ。 突き破ろうと、壁を越えよと手を伸ばした所で白い世界へは届かない。 三神帝に生を成し遂げたなら最期だという事を胸奥深くに、刻むべきなんだよ。 だから､君は､三神帝から､離れて､正解だったのかも知れない｡ 汚い仕事を､ヤるのは“僕”の役目だ｡ 『殺されていく者達の姿を､見てご覧｡死に悶える声を…｡すがる者が、手を伸ばしたとしても､それは､払うべきだと､胸に刻んでおきな』 『隗兄様…』 この世の論理だから｡ 慧には､叩き込んだ｡ 『そいゆう風に､叩き込んできた結果が､悲惨な幕開けを､開くのだと､予想出来ないであろう｡私だって､予測不可能な時は､万全な体勢を整えながら､魔方陣を､発動させるからのぅ…』 サラサラと、せせらぎが揺れる｡ 鳴呼、そろそろ､夢から目覚める合図が､鳴り響く､時間に､到達する｡ ソナタは､見ていても､その､結果を､酷く､乞うたりはしないだろう｡ あの時の様に…｡ 冷静な判断を､下す｡ “僕”も､肖りながら…｡ 行動に､移すとするよ｡ 然れど…｡ ー…現の中に｡ 懐かしくも､儚くさせる｡ 雨の交響曲が､流れているのは｡ ソナタの影響か｡ それとも､先ほど､口にした“彼女”の､影響か｡ ゆったりと､緩やかに､奏でられていく､ピアノの音色が｡ “僕”を､夢から醒まさせようとしていた｡