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第二章:水の蒼薔薇

―天界・水輝國・水鬼帝邸・隗斗の寝室 月日とは、流れるのが嘘の様に早い。 目的の為だとはいえ、可愛い弟と、悪友を手に掛けるなど、どうかしている。兄二人や水鬼帝の方々に知られてはいけない重大な秘密。 特に、駁さんは慧弥と親友。 親密な関係まで築き上げているぐらいだ。容易に、素性をバラすのは自分の身を滅ぼしてしまう。 氷蹄帝と三神帝が、主従関係に基づいているとはいえ、銀莱帝の様に深い結び付きがある訳ではない。 この、水輝國で三神帝が頂点に立つから主従契約を結んだまでだ。互いの家系は干渉しないのをモットーにしている氷蹄帝からしてみれば、たかが家系の争いなど傍観で十分。 しかしながら、今回は観ているだけでは済まされないかもな。 俺が三神帝の掃除を始める鐘を鳴らした。 誰一人として合図を聴く事なく、掃除という排除。 存分に楽しめる遊戯だよ。眠りの中で、こんなゾクゾクするぐらい。 早く、首を掻っ切りたいね。 ジワジワと追い詰め、最後の最後で命乞う姿を眺め『滑稽だ』と貶すのも悪くない。 そんな楽しみが、一つ増えた。 今からでも、首を狙いに行きたくって、ゾクゾクしている。 三神帝の血が騒いで、大変だ。 だけど、暫くは、お預け状態にしておこう。 あの子が、熟するまでは。 俺も、一先ず、先手を打つ方法を、考えなければいけない。 老い耄れ爺が、座る御上の座を、奪う為には。 色々と、準備が必要だ。 こう考えると、待っている時間も苦ではない。 楽しい楽しい遊戯になるのだから、じっくり始めていこうじゃないか。 四十年前の惨劇の中で生まれた復讐という名の演目を。 老い耄れ爺の戯れに、付き合ってあげるんだから、感謝しなきゃね。 この、俺が、全て、準備したお品書きを、一から堪能出来るなんて、贅沢だ。

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