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まだまだよ、露草ちゃん。 もっと、腸が煮えるぐらいエグく成長しないと。俺は、生温い黒さだけで、満足する子じゃないんだ。 カレーを、ぐつぐつ煮るぐらいの熱さじゃなければ、燃えるもんも燃えないんだよ。 『好き』という感情だけで、俺に、アタックしてきているなら、幾らでも払い退けてあげる。 「それだけは勘弁!」 「だったら、俺の周りを彷徨(うろつ)かないで」 赤く、生臭い世界へ来る覚悟が出来たらなら落ちてきな。 そん時は、たっぷり愛でてあげるからさ。ソナタという黒い感情を、心で渦巻かせている男を。 「…っ」 「行こう、燐夜」 「う、うん…」 いいね、陥落した表情。益々、褒美を与えたくなるよ、露草ちゃん。 俺は、二人に、気付かれない様に、口元の端を上げて、部屋を出た。 これから、起きる惨劇の一味にしか過ぎないのに。 その、一味が、大切だと、気付かされる。 俺の…。 遊びに、華を添えられる人達は、少ない。 気休めになるくらいの箸休めには、水鬼帝の方々は、貴重だ。 今宵の、夕食は、カレーでも、作ろうか。 有頭海老を使った『シーフドカレー』を。 グツグツ、厚鍋で、煮てあげる。 海老の頭は、摺り鉢で、潰して…。 旨味たっぷりの海老味噌を、アクセントに。 イカと、玉ねぎを炒めて、鍋で煮込む。 スパイスは、辛いのを使おう。 青唐辛子と、コブミカンを使い、クミン、ガラムマサラ。コリアンダーを、混ぜた物。 露草ちゃんが、喉を、唸らせるくらいの極上カレー。 隠し味は…。 アレで、良いかな? 誰もが…。 一度は、口にしたら、蕩ける、甘いチョコレート。 最後に…。 皿に、持って、パプリカを、添えれば、出来上がり。 隗斗の、オリジナル激辛『シーフドカレー』。 堪らなく、料理に、腕を、振るいたくなるなんて、珍しい傾向だ。 これも…。 横に、居る、燐夜の影響かな。

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