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露草ちゃんの噂は、兼々、耳にしていた。
実物を、瞳に映すと、面白い男性だと思った。彼の生まれ変わりだとはいえ、嗜好も、仕草までも似てしまうとは。
俺を、再び、落とすつもりで記憶喪失のフリをしているのか?と問いたくなる。
『また、玉砕?!』
『櫂覇さんっ…』
『毎回思うが、懲りないよな。隗に斥けられてるくせに、諦め悪いって云うか馬鹿と云うか』」
以前、櫂覇兄様が、露草ちゃんと話している所を立ち聞きしていた。
『それでも好きなんです…』
『ねぇ、隗の兄に向かって普通言うか?』
『どうせ、全部見てたんでしょう…』
『まぁな。隗を起こしに来たんだけど、燐ちゃんが先だったみたいだ』
頭を、がしがしと掻きながら露草ちゃんに話す櫂覇兄様は、バツが悪そうだった。
俺が、物凄く、寝起き悪いのを知っているからこそ、慎重に起こそと考えていたのだろう。
自分の場合は、何時も酷い目に合うのに、燐夜と露草ちゃんだけは回避される。
其処が、不満だったのかと言えば、多分当たっている。燐夜は兎も角、弟を追い掛け回す虫は気に食わなかったのかも知れない。
『隗の何処に惚れたの』
『それ、普通、兄に言いませんよ。虐められるのが目に見えてるのに…』
『単に、俺が聞きたいだけ。別に、櫂那に言ったりしないし。あんなに、斥けられているのに、隗の何処に惚れたのか知りたくってさぁ』
それは、是非とも興味ある質問だ。
答える回答は、解り知れているのに…。
櫂覇兄様も、意地悪だ。
そんなのは…。
辺りを、見回して、聞いてあげるべき。
本人が…。
聞いている中で、聞いたら、露草ちゃんが、何と、答えるかなんて、手に取る様に、解る。
ー…答えは、明確。
『何故か、惹かれてしまった…。あの、妙に、見透かされている感じが、堪りませんね』と、譲歩しながら、言うに決まっている。
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