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怯えていては、意味を為さない。 殺戮神なら、人一人殺められて、当たり前なんだ。剣を握るとは、命を狩るという事。 「老い耄れは、何て?」 ふわりとした、トーンが耳に届く。 俺が、後ろを振り返ると、黎斗兄様が微笑んでいた。 「隗兄様を、連れ戻せと命令が出ました…」 「ふーん…。隗を、連れ戻せね。馬鹿じゃないの、老い耄れ爺」 「…」 「…隗も、心を傷めたと思うよ。何だかんだで、慧を可愛がっていたから。どうしようもないくらい、苦しかった筈」 黎斗兄様は、隗兄様を理解している。双子故に、伝わる部分があるらしい。 血の繋がりを、何より大事にしていたから、余程、心を傷められただろう。 俺は、ただ、呆然と、立ち尽くし、見ているしか出来なかった最低野郎だ。 兄を、責められる筈もない…。 責めてしまえば、自分の行いは裏切りに値する。 俺の心の中で、決めた誓い。 どんな事があろうと、長男である隗兄様を、裏切るな。 あれでも、冷徹な部分が、発動する。 『殺戮の桜』と、言われているだけあり、顔に、出てくるんだ。 あれを、見た瞬間、流石の、俺でも、息を飲んでしまう。 『巫麒…?内臓は、ちゃんと、残さないと、失礼だろう。何で、術を、使って、殺そうとする』 『隗兄様みたく…術を、使いたくって…』 『だからって、肉体から、内臓を取った上に、ぐちゃぐちゃは、無いだろう?この、死人、浮かばれなくって、成仏が、出来なくなったら、どうするの』 随分、昔に、兄の真似をして、術を、使ったら、肉体から。 全内臓が、消えるという事件が発生した。 勿論、内臓が、何処に、行ったのかは、解らない。 だけど、内臓が抜けた死人は、木乃伊みたく、干からびていたのを覚えている。 それは、血液が、全部、抜ければ、干からびて、当たり前かと、後になって思った。

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