28 / 94
3ー5
ただ、彼が従兄から襲われているのを目撃して以来、凄く弄り倒してくる。
妹に、しかも、末っ子に弄り倒される兄ってなんだろう。兄にすら吐いた事はないけど、バレたら確実にヤバい感じがする。
涼しい顔をしながら、血の繋がりある者をこよなく愛する傾向がある故、弟妹は大切な部類に属している。
隗斗が、大切にするのは自分を裏切らない従人と、逆らえない血の繋がりがある家族だけ。
但し、一人を抜いての話。
『僕はね、仇で返されるのが一番大嫌いなんだ。裏切り?上等じゃない。それ、相当の御返しをしてあげるよ…。この世で一番美しく、赤が似合う、狂いし壊れた人形へ』
花手向けの様な、科白を思い出した。
この世で、一番大嫌いな存在へ送った言葉。疎み、恨んだ。
けれど、報われない事を理解しているのは、隗兄様自身。
どんなに、毒を撒こうと、どんなに、殺そうと、与えられた傷は一生癒えず。深い深い心に閉ざしていく。
彼は、ふっと、亡き母の姿を、浮かべた。
何時しか、壊れてしまい、自分の子供の存在すら、解らなくなった女性。
兄からすれば…。
穢れた女だろう。
実の父親に、抱かれて、心を、壊して、忌み子を、生んだんだから。
それが…。
父は、許せなかったのかも知れない。
家庭に、傷が入ったのは、多分、亡き母親が、義父弟を、可愛がり始めてからだ。
『君が、いけないんだ。父に、抱かれるなどするから。だから、私は、夜神帝の者と、浮気をする』
そう、告げた父親の瞳は、冷たかった。
しかし、亡き母親は、納得がいかず、嫉妬心だけが。
心を、支配していった。
『千綵様が、悪いのよ…!私が、彼を、傷付けるのも、兄達を、殺す任命が下ったのも、全て、千綵様が…』
何と、醜い姿なのだろう。
たった、一度の誤りが、全てを崩していくのを、彼女は、知った。
ともだちにシェアしよう!