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ただ、彼が従兄から襲われているのを目撃して以来、凄く弄り倒してくる。 妹に、しかも、末っ子に弄り倒される兄ってなんだろう。兄にすら吐いた事はないけど、バレたら確実にヤバい感じがする。 涼しい顔をしながら、血の繋がりある者をこよなく愛する傾向がある故、弟妹は大切な部類に属している。 隗斗が、大切にするのは自分を裏切らない従人と、逆らえない血の繋がりがある家族だけ。 但し、一人を抜いての話。 『僕はね、仇で返されるのが一番大嫌いなんだ。裏切り?上等じゃない。それ、相当の御返しをしてあげるよ…。この世で一番美しく、赤が似合う、狂いし壊れた人形へ』 花手向けの様な、科白を思い出した。 この世で、一番大嫌いな存在へ送った言葉。疎み、恨んだ。 けれど、報われない事を理解しているのは、隗兄様自身。 どんなに、毒を撒こうと、どんなに、殺そうと、与えられた傷は一生癒えず。深い深い心に閉ざしていく。 彼は、ふっと、亡き母の姿を、浮かべた。 何時しか、壊れてしまい、自分の子供の存在すら、解らなくなった女性。 兄からすれば…。 穢れた女だろう。 実の父親に、抱かれて、心を、壊して、忌み子を、生んだんだから。 それが…。 父は、許せなかったのかも知れない。 家庭に、傷が入ったのは、多分、亡き母親が、義父弟を、可愛がり始めてからだ。 『君が、いけないんだ。父に、抱かれるなどするから。だから、私は、夜神帝の者と、浮気をする』 そう、告げた父親の瞳は、冷たかった。 しかし、亡き母親は、納得がいかず、嫉妬心だけが。 心を、支配していった。 『千綵様が、悪いのよ…!私が、彼を、傷付けるのも、兄達を、殺す任命が下ったのも、全て、千綵様が…』 何と、醜い姿なのだろう。 たった、一度の誤りが、全てを崩していくのを、彼女は、知った。

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