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思い出したら、キリが無く。 名前で、言い争ったけ。 『その辺は、隗に任せた方が、正解』 だから、彼は言ったじゃないか。 『憎いけど、亡き母の名を貰い、妃膤の名を貰い、騎兎の名を貰おう…』 そう、言いながら決めたのが『妃奈騎』だ。 流石は、早い。 名前が…。 即決。 『隗は、生まれてきた御子に、何て付けるの?』 『秘密…』 可愛らしく、人差し指を、口元に、当てて言っていたけど。 それすらも…。 綺麗に見える。 『殺戮の桜』と、言われているだけあり。 魅せる表情も、解っている。 『でも、有り難う』 『どういたしまして。黎斗に似て、綺麗な子に、育つだろうね。だから…僕からも、お願い…』 仄かに、微笑んだ隗斗は、俺に、無理なお願いをしてきた。 復讐の為だけに、双子である俺に『自分を、殺せ』と、言う兄が居る。 素直に、従う様に見えたなら、それは、俺と隗斗の暗黙の了解。 四十年後の世界に、慧弥の子として生まれるとは、考えたものだ。 三神帝の血筋ならではの能力と言えば、良いのか。 スポイト一滴の血があれば、隗斗は、何度でも、三神帝の血筋の者のお腹に、宿る。 少し、特殊な血だ。 あんなに毛嫌いしていた咽鬼と、手を取り合うなんて、随分、成長した様にも見えたけど。 実際は、違った。 『アイツの全てを、ひん曲らしたくなるね…』 謂わば、監視? まぁ、隗が、老い耄れ爺みたいな事はしないのは、解っているけど。 四十年後の世界で、決着付けるのは、余程、時間を費やした感じ。 俺は、知らないままの弟で、居る訳にはいかない。 父様も、薄々、感じているだろうし。 隗の計画が、どんな類いのものかは、今から開かれる物語に関係してくる。 水鬼帝に、居るなら、それなりの動きも見せてくれるだろう。 俺が、繋がらなくたって、隗は、自分から繋がってくるのは、昔からだから、放っておいても大丈夫。

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