31 / 94
3ー8
思い出したら、キリが無く。
名前で、言い争ったけ。
『その辺は、隗に任せた方が、正解』
だから、彼は言ったじゃないか。
『憎いけど、亡き母の名を貰い、妃膤の名を貰い、騎兎の名を貰おう…』
そう、言いながら決めたのが『妃奈騎』だ。
流石は、早い。
名前が…。
即決。
『隗は、生まれてきた御子に、何て付けるの?』
『秘密…』
可愛らしく、人差し指を、口元に、当てて言っていたけど。
それすらも…。
綺麗に見える。
『殺戮の桜』と、言われているだけあり。
魅せる表情も、解っている。
『でも、有り難う』
『どういたしまして。黎斗に似て、綺麗な子に、育つだろうね。だから…僕からも、お願い…』
仄かに、微笑んだ隗斗は、俺に、無理なお願いをしてきた。
復讐の為だけに、双子である俺に『自分を、殺せ』と、言う兄が居る。
素直に、従う様に見えたなら、それは、俺と隗斗の暗黙の了解。
四十年後の世界に、慧弥の子として生まれるとは、考えたものだ。
三神帝の血筋ならではの能力と言えば、良いのか。
スポイト一滴の血があれば、隗斗は、何度でも、三神帝の血筋の者のお腹に、宿る。
少し、特殊な血だ。
あんなに毛嫌いしていた咽鬼と、手を取り合うなんて、随分、成長した様にも見えたけど。
実際は、違った。
『アイツの全てを、ひん曲らしたくなるね…』
謂わば、監視?
まぁ、隗が、老い耄れ爺みたいな事はしないのは、解っているけど。
四十年後の世界で、決着付けるのは、余程、時間を費やした感じ。
俺は、知らないままの弟で、居る訳にはいかない。
父様も、薄々、感じているだろうし。
隗の計画が、どんな類いのものかは、今から開かれる物語に関係してくる。
水鬼帝に、居るなら、それなりの動きも見せてくれるだろう。
俺が、繋がらなくたって、隗は、自分から繋がってくるのは、昔からだから、放っておいても大丈夫。
ともだちにシェアしよう!