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―水輝國・水鬼帝邸・隗斗の寝室 バリーんと、窓ガラスが割れた隗斗の部屋。 破片があちらこちらに散らばっている。割れたガラスを睨み付けながら、手に握り締めた。怒りに震えながら隗は髪を掻きあげる。 「随分と派手にやりましたね、隗坊っちゃま…」 「翔也か」 「何を苛立っているかは解りますが…」 「少し正気を失っただけだ。こんな事で黒騎士など呼ぶなよ!」 部屋に来た翔也は、隗斗の所に歩み寄った。 「都霞が紅霞を呼びにいきました…」 「ちっ、余計な事を」 「隗坊っちゃま、明後日に、天界で、パーティーがある事を、知っていますか?」 「知っている」 あやす様に説明する。 「“玄兎様”は御越しになりませんが、代わりに千綵様と黎斗様達が出席なさいます。黎斗様から伝言を預かってきました…」 「そう」 クスッと唇をつりあげ、握り締めていたガラスを手から落とした。 「やっと、逢える」 「…」 「伝言、聞きたい」 「畏まりました…」 翔也は、隗斗に頭を下げた。この二人の関係は主従関係。それは三神帝に居る頃から変わらない。 ただ、水鬼帝の者も櫂那や櫂覇も知らない。 これが、隗斗と翔也の秘密。 四十年前の事を、二人は、緋神帝の、双子には、話していない。 故に、水鬼帝の者が、知る筈も無い内容だった。 それは、目の前に居る彼が、決めた事だから、仕方ない。 ー…出生は、愚か。 四十年前の出来事は、秘密なのだ。 特に、諷夜と斑には、酷な事だから。 亡き『咽鬼』と『慧弥』は、二人の親友。 死因を知ったら、きっと、ショック以上に…。 精神ダメージが、来てしまうのを、隗斗は、知っていた。 そうまでして、教える必要も無いと、判断した上の配慮だった。 水鬼帝に来てから、そう、思える様になったのも、養父である禪のお陰かも知れない。 でなければ、二人の記憶を消している。

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