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「あまり、無理な我慢は自分を滅ぼすよ。隗斗…」 彼の紅い瞳が、冷めた色を出す。 「何が言いたい」 ガバッと、隗斗の手を取る紅霞。 「殺したいなら、思う存分に殺していい。けれど、自分の体に傷を付けるのは許した覚えない。少なくとも俺は許さないよ…」 「…っ」 「君が幼い頃から俺は言っているハズだ。『自分の体に傷を付けるな』と、おいつけは守らないとね?」 「こんなかすり傷だけも許さないとは、ドコまでも忠誠心だけ高い十五龍神だっ」 強く握られている手を払う。邪険な表情をし、彼は部屋から出ていく。 “ドコまでも忠誠心だけ高い”。それは、此の國に棲む神々に対しての冒涜なのかも知れない。 「素直じゃないのは、昔からか」 「余計に、怒りを増やしてどうするんです」 「其処は“蒼氷の薔薇”が、対処すべき点。俺や、貴方は主の命令に従う下僕にしか過ぎない。隗斗に昔以上の記憶なんてない。四十年前と、今しか彼にはないのだから…」 「やはり、貴方は黄龍を夫に持つだけあります。そうでなければ、あの、隗坊っちゃまを抑えるなど不可能」 そう、吐けば、俺が、怒るのを知っているのか。 だが…。 挑発には、乗らない。 ふんわりと、紅霞は、微笑む。 嫌味なのかも知れないが、此処で、荒立っては、十五龍神としての名が廃る。 そうすれば、十五龍神を、纏めている長である『天龍』に、迷惑が掛かってしまう。 『年上だろうと、今の長は『獅天』だ。解っているな、紅霞』 重々、承知だ。 だから、余計に、迷惑を掛けていられない。 『私の子を、頼みますね!紅霞さん』 嬉しそうに…。 君が、言うから。 俺は…。 『任せて』と、口にしたのを、彼は、思い出した。 信頼している人の孫だからとか言ったら、殺されそうなので、止めておこうと、紅霞は、思った。

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