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そんな理屈を並べられて、素直に『そうですね』と頷くほど、俺は、聞き分けが良いわけじゃない。嫌味の一つ言えないで、十五龍神と馬鹿にされるのは好かない。
「せいぜい、魔由羽に厭味を言われて下さい!」
「…」
「息子共々に」
鼻で笑いながら、俺は隗斗の部屋を出た。 現代翁がSっ気あろうと、自分の夫の方が一番恐い。陰険万年ド鬼畜男だと有名だからな。
それに、比べれば、翔也の嫌味など取るに足らない戯言。
「あの現代翁に厭味を云うとは…」
「泉水、聞いていたのか」
「隗が、ご乱心だと云うから来てみましたが、まさか貴方が、翔也に対し挑発を蒔くとは思いませんでした!」
「あのくらいで、ヘコタレても困る。最も、一番は千綵様の言葉がキツいだろうがな」
「言えてますね…」
どんな言葉より、千綵様の言葉がキツい。 あの方は容赦なく落とすからな。
「魔由羽の毒でも浴びればいいんだ」
「ふふっ…」
「鬼畜さなら負けてはいないだろう?」
「えー。あの方の下に居るなら、鬼畜さは負けていないね。さぁ、紅霞、仕事に移ろう…」
泉水。十五龍神『水龍』だ…。
俺とは幼なじみにあたる。
これでも『黒龍』を、夫に、持っているのだが。
夫婦揃って、穏やかと言うか、冷静すぎる。
しかしながら、泉水の場合、見定めで嫁として選ばれた。
ごく一部しか知らない情報なんだけど。
ま、本人達が気にしていないから、何も言わない。
だけど、困ったのは、隗の性格。
あの嗜好だけは、治せる自信が無い。自虐に入るのは、癖なんだが、恐いのは、其処じゃなくって、全滅させる方法を選ぶ事だ。
自分がスッキリするまで、なぶり倒すのが趣味で、たまに、遠い目を向けたくなる。
しかし…。
主と共に居るのが、十五龍神の役目。
それを、覚えているのか、覚えていないのか、不明なんだよな。
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