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【櫂覇side】
朝から早く起きている隗。それは、普段の生活から考えたら珍しい。
燐ちゃんも口を開けたくなるくらいに驚いたらしい。
ふっと、露草に視線を映すと先日の事を思い出してしまった。あんな風に、優雅に座りながら資料に、目を通しているアイツを見ると、やっぱ美形だよなって思う。
先日の、強引なキスをしたとは想像がつかないくらいだ。
隗が、不思議そうに露草の眼鏡姿を、じっと見つめながら話をかけた。
視線は、資料に向けながらも隗の話を聞いている彼。
「隗?」
櫂那が、不思議そうな顔をした。
「…何っ」
「僕も何してるの?って聞きたいよ…隗」
「問題ある?」
ポカーンとする俺や櫂那。燐ちゃんは、頭を押さえながら隗に言う。
燐ちゃんの言う通り、君は何をやってるんだ?
「大有りだ!」
「櫂覇兄様には、言われたくないな…」
そんな冷めた声で吐かなくってもよくないか?
恐いって…。
何を苛立っているのかは、解らないけど。朝から、機嫌がナナメなのは、理解出来る。
俺は、思わず、唾を飲む。
弟である隗が、恐いとか、有り得ないが、侮ってはいけない。
感が鋭く、洞察力も、人倍、働く。
これ以上にないくらい恐ろしい部分を持っている。
俺達、双子ですら驚くぐらいだ。
何かを、察しているなら。
恐怖の賜物。
隗が、不機嫌になるのは、会議の内容が、気に食わないか。寝不足のどちらか。
しかし、今、思い当たる事は、一つも無い。
ん-…。
考え過ぎかな。
『櫂覇兄様の…鈍感。そう、余裕持っていると、都霞取られちゃうよ』
何故、其処で、アイツの名前が、出てくるのかは、解らない。だけど、取られるとか、関係無いだろう。
都霞は、俺の事が嫌いだ。
あからさまに出る態度で、何となく、察知出来る。
それに…。
我慢出来ず、犯してしまったのも事実だ。
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