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況してや、横目に居る人物に、惚れているなら、尚の事。見込みがあるかは、露草の腕に掛かっている。
亡き、親友の落とし胤である彼も、薄々、気付いているのだろう。
息子の想いが、本物であって、己に、真っ直ぐ、向いていると。
「スゴいご立腹でしたね…」
「…惚れたな」
小さな声で、囁かれた。無論、意地を張る訳ではなく隗斗は、視線を綺麗に向ける。
銀糸の髪が、彼の頬を掠めた。
「言わずとも解るとは…」
「ほぉーっ。的中か」
「欲しい者を逃す程、俺は、馬鹿じゃないよ。躾がいが、あるとは思わない?」
「…」
クスクスと、微笑い、椅子から立ち上がる。若い貴族神を見据えて。
「彼は、俺のだよ…」
「…」
宣戦布告を、投げ掛けた。
「新しい首輪、造らなきゃ」
会議室の扉を閉める時に、聞こえた言葉に、魔由羽を、含め、十五龍神達は、唖然とした。
「否定しなかったですよ…」
「隗が、本気?」
「あの、発言からすると…」
「駁…覚悟決めておけよ!」
「―…へっ」
隗斗の発言は、確実に、実行されるという証拠。でなければ『首輪』などと言わない。
「どうやら、駁の三男坊は、隗様のお心を捕らえたみたいですから…」
「えぇぇぇ…ぇっ!」
大きな声が、議会堂に、響き渡った。
それは、盛大に、叫びたいだろう。
気紛れな隗斗が、息子に、惚れたという事実を、投げられたら。
しかしながら『緋神帝』に、首輪を、着ける習慣は、あっただろうか。彼の母親ですら、危うい発言はした事は無いと、思い出す斑。
一体、誰の影響だ…。
ー…鳴呼、頭が、痛くなってきた。
少しだけ、夫である諷夜の気持ちが、解った。
毎回、露草の表裏さに、悩まされている夫が、哀れに思える。
これで、首輪の件を、話したら、泡を吹いて倒れそうな気がしてきた斑。ご老体に、鞭を打っては、気絶してしまうだろうか。
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