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事実、老い耄れ爺は、奈兎と、騎兎の父親。 醜くっても、血を引いているのは、変わらない。 「あ、あのさ…」 「ん?」 「今朝の言葉、嘘じゃないから…」 「…」 「櫂覇兄様と何があったか知らないけど、あれは、あの時言った言葉に、嘘偽りないから…」 それを、少しでも逸らしたかったのが本音。 露草ちゃんを、巻き込みたくない。 けど、俺は、彼が好き。欲しい。 「櫂覇さんとは、何もないから。少し、イラっときて、接吻したけど」 櫂覇兄様と、接吻したんだ。 「俺のと、どっちがいい?」 今朝の、櫂覇兄様の態度には、そいゆうのが含まれていたんだな。ムカつく。 「え、ちょっ、隗……ふぁっ」 「露草ちゃんの、押しに負けたよ…」 「それ……って…んっ」 こんなに、自分の気持ちに、素直になったのは、初めてだ。 ー…何故だか。 懐かしく、思えるよ。 『“蓮華”』 『はぁぁ、よう、飽きないのぅ。僕は、覩梦の顔を見ると…貶したくなると言うのに…』 『へーっ、これが、水鬼神』 『…』 優しく呼ぶ声に、反して、しかめ面をして、憎々しい言葉使いになっていた。 それを、横から●●●が。 あれ、アイツ…。 覩梦の存在を。 『一度だけだ。秘密の場所から出てきたのは。●●●は、覩梦を、見て、直ぐに、水鬼神と、気付いたよ…』 蓮華…。 何で、大切な事を、今、話す。 『●●●が、嫌がる…。普段、秘密の場所から顔を出さない彼女が、あの、瞬間に、出てきたのは、匂いがしたんじゃないかと…思った…』 まるで、敏感だからなと、言いたげ。 確かに…。 アイツは、気紛れで、五感が冴えている。 昔も、何を思ったのか、手伝ってくれた事はあったが、その後は『止めた』と、言って、仕事を放置したな。 お陰で、仕事が、大変になった記憶がある。 『『誰という顔をしていた。面白いわ。水鬼帝の総帥。そして、蓮華…。鬼桜は、何処の國から、鬼族の頭を、見ている事を、忘れないで』と、不明な言葉を、残した…』 やられた。

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