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アイツ、完全に、解っていたじゃないか。
四十年前、どうなるか、俺が、犯す罪すらも。
そして、心地よい、闇にまみれた男の事すら。
ー…まるで、僕が、美醜を、味わう様な感じになるのを。
「隗…愛してる」
「好きだよ…」
柔らかい唇が、俺の唇を包む。
「露草ちゃんは、俺だけを見ていればいい…」
「あぁっ」
露草ちゃんの顔を上げる。瞳を逸らさず、真っ直ぐと見つめた。
「隗は、俺だけを見ていて」
「勿論…」
購えない事を、予測していて、アイツは、俺に、新たな水鬼神を、作らせようと、計った。
ー…理由は、解らないが。
きっと、鬼桜が、関係している。
蓮華に、不明な言葉を、残すなんてあり得ない。
四百年前、何があったんだ。アイツが、秘密の場所から出て来てまで、覩梦を見に来たとは、思えない。
水鬼帝の事で、何か、知っているのか?
それは…。
後で、問い詰めるとして。
『それが、叶うと、良いのぅ』
ー…蓮華が、くすりと、笑う。
まるで、アイツは『手強い』と、言いたい様子。
其処は…。
手を、打つとして。
というか、黎斗入れば、早くないか。
なんて、考えたが、出てくる可能性が、低いと、考えた。
『ー…叶うと、良いわね。復讐の成り果てに、隗は、何を…見出だすのかしら。水鬼帝の秘密ならぬ、蜜の味を、覚えてしまえば、待つのは、償い…』
俺には●●●が、囁いた科白が、聞こえなかった。
濡れた華の如く…。
甘い、甘い、蜜を吸いたい。
美味な華の味は…。
仄かな大人の味だった。
ただ、漣が、揺れる景色の中、覩梦の姿が見えたのは、覚えている。
これは、前兆のだろう。
“水無”が、目覚める。
水鬼帝の奥深くある、鳥籠の中から。
俺の罪とも言える過去が。
ー…目を、覚ますだろう。
夢現の、せせらぎが、靡く、あの、場所で。
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