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第八章:水鬼三兄弟

―天界・水輝國・水鬼帝邸・隗斗の寝室 「こらぁぁぁぁぁぁぁ…っ」 朝から、壮大な声が、隗斗の寝室で叫ばれる。 原因は一つしかないのだが。 「露草っ、今日こそ殺してやるっ!」 可愛い弟を、抱き締めながら、寝ていた露草が居たからだ。櫂那は青筋を立てながら、怒鳴る。 しかし、この時、彼は、一つだけ忘れていた。 スヤスヤと、安眠している弟を起こすと、地獄絵巻みたく、壮絶な絶叫を味わう事を。 「櫂那さん、朝から騒々しいです」 「貴様が、隗と同じベッドに寝てなければ、叫ばずに済むっ…」 「俺、貴方に迷惑かけるような真似しましたか?」 今日の、露草は、断固、引き下がらない。 「してる。可愛い弟と、一緒に、添い寝…」 「いい加減に、弟離れしてあげたらどうです?婚約者の妃奈騎が、可哀想だ…」 「なにっ…」 自棄に、毒を吐く、彼に、対して青筋が、増えていく。今日は、どうして、引き下がらないのか不思議なくらいだ。 「今のは、俺の科白じゃありません」 「じゃあ、誰が…っ…」 「折角、いい気持ちで、寝ていたのにっ」 「か、かい…」 不機嫌丸出しの弟が、ドスの利いた声を、張り上げた。 水鬼帝に、来てから出来た掟を、すっかり、櫂梛自身、忘れていたのだ。 この、状況になったら、どうにもならない。 頼りになる、燐夜に、毎回、お願いする訳にもいないだろうと、露草は、考えた。だからと言って、己まで、犠牲になるのは、性に合わないので、敢えて、手は、差し伸べない。 ー…弟離れには、丁度、良い機会じゃないか。 この際、緋神帝の双子は、隗斗から離れるべきだ。 何れ、櫂梛は、夜神帝の跡継ぎである『夜神帝 妃奈騎』と、契りを、交わす。 今の状態を、相手に晒すとなると、流石に、引いてしまう。弟より、自分を、見て欲しいと、考えるのが、普通だ。 慣れていても、正直、邪魔者扱いをしてしまいたくなる。

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