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【燐夜side】 今日は、一段と、騒がしい。隗の、寝室に行くと、拷問にあっている櫂那が視界に入る。 これは、安眠している隗を起こしたな。 そんでベッドの縁に、座りながら足を組んでいる露草は満面な笑みを浮かべている。 『隗まで、汚染されてる…』 今、間違いなく、堪忍袋が、切れた音が聞こえたような。 絶対、危うい状態なんだけど、声が、届かなかったのか。 営業スマイルを、浮かべたままの露草が、ベッドから立ち上がり、近くに歩み寄る。 ヤバいよ、露草キレると、兄さんみたいになるんだもん。 「ぁっ、ふぁ…露草ちゃん…っ」 「…」 やっぱ、親子だけあるわ。 本当に、人前で、あんなヤラシイ接吻をするなんて『蛙の子はかえる』だね。 「露草…ちゃんっ…ぁっ、んっ」 「ふっ」 「…」 「燐ちゃん、居たの。じゃあ、櫂梛さんのコトは、頼んだよ!」 縋るように、ヘターとなる隗を抱えながら、部屋を出ていく。 可愛い弟と、露草の接吻見せられて、放心状態の櫂梛。本当に、ご愁傷様。 露草キレると、兄さんみたいに、鬼畜だから手に負えないんだよ。 知らない櫂梛からしたら、ショックだろうね。朝から、過激な接吻。 あれは、単なる嫌がらせだよ。 僕は、半ば、呆れながら、櫂梛を、現実の世界へ、戻す方法を、考えていた。 『斑さん、すみません』と、心の中で、呟く。 本気で、キレた露草は、やはり、兄さんの子だと思う。 ー…普段、隠されている分、気付きにくい。 露草自身、父親に似ているとは、到底、思えないだろう。 しかし、どう、考えても、似ているよ。 だって…。 『諷夜は…キレる時が、少し遅いからね。水鬼神としては、立派なんだけど、あんな風なのは、母親似なのかも知れない。燐夜、お兄ちゃんは、背負っている物が大きいから、苦労するかもね』 父上は、そう、言っていた。 まだ、幼い自分に、話すのは、可笑しいと、思ったけど。 ストッパーが、必要なんだと、言いたかったのかも。

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