89 / 94
8-6
―天界・水輝國・水鬼帝邸・リビング
テーブルには、バランスが、取れた食事が並べられている。
隗を抱き抱えて来た露草は、ソファーに、寝かせ自分の珈琲カップを、取った。
「あれぇ、こんな所で、寝てるし…」
「暁草、あまり、近づくと、殺されるよ」
「えっ…」
「さっき、櫂那さんが、無理矢理、起こしたせいで、機嫌悪いんだから」
リビングに、来たのは、可愛い顔をした男性。暁草と呼ばれた男性は、ビクッと、体を震わせた。何故なら、彼も隗が、起こされた時の、状況を、何回か、目撃したコトあるからだ。
「で、櫂那は?」
「今頃、即死じゃないかな」
「うわっ。ご愁傷様…」
この二人は、兄弟だ。美形な露草に比べ、暁草はどちらかというと美少女系。
二人が、並べれば、美男美女カップルに見える。
「そういや、禪兄様は?」
「…禪は」
「おはよう」
「おはよう…禪兄様」
ファーと、欠伸をしながら、起きてきた人物は、かなりの美形な大人の男性。
ダラダラの白いワイシャツを脱ぎ、真新しいワイシャツに着替える。
「暁草」
「なにっ…」
「お前、また」
「あぁぁ、聞こえない…」
禪に呼ばれ、顔を真っ赤にする暁草。
これは、何かがあると、悟った露草は、兄二人の会話を、静かに、聞いていた。
慌てるあたり、暁草が、やらかしたとしか思えないが、冷静沈着な禪が口にするという事は、相当な出来事かも知れない。
長男だけあり、父親の仕事を、手伝っているだけある。それなりに、洞察力はあるし、双子の弟の事も、多少なり、見ているのだろう。
でなければ、緋神帝の双子と、隗斗を、育てたりはしない。
養子として迎えているのが、凄いよ。
禪兄様、独身なのに…。
何て、露草は頭の中で、思った。
『へぇぇ、水鬼帝の兄弟って、遺伝的に、燐兎譲りね。これは、三神帝の御上も、靡くわね』
『ふふふっ、隗の好みも、困ったものよのぅ…』
二人の人物は、寝ている隗斗を、他所に、観察していた。
ともだちにシェアしよう!