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「って、お前は人の話を聞かないで…」
明らかに、怒りマークが、禪に見える。
「禪だって、俺の気も知らないで、毎晩飽きずに亜柘を連れ込んで! 翔也様にバレたって知らないからな」
「心配無用。ちゃんと、許可は、頂いている…」
この、水鬼帝のリビングは賑やかだ。そう、感心する露草は、ソファーに寝かせていた隗の肩を揺する。
「隗…」
「んっ」
「ゴメン。少し激しすぎた?」
「大丈夫。それにしても、禪父様も暁草も、朝から元気あるねぇ」
くーと、背伸びしながら、ソファーから揉めてる二人を映す。
あの二人が、揉めるコトは何時ものコトだ。 長男の禪は、銀莱一族の次男坊を落とそうと一生懸命だし、次男の暁草は、そんな銀莱一族の現代翁に掴まる毎日だし。
「でも、アレは櫂那兄様にとっては、良い薬だったと思うよ」
「そうかな…」
「うん。だって、婚約者居るのに、何時までも、弟離れ出来ないなんて緋神の嫡男として恥じだね!」
毒を、吐く、隗斗。
「だいたい、何時も、翔也様に、掴まって一体何してるんだっ!」
「何で、禪に、言わないといけないんだよ」
毎回なことながら、二人を止めるのは…。
「はい、そこまで…」
「朝から喧しい」
髪を掻き上げる諷夜と、呆れ半分の駁。
流石の二人でも、親には、敵わない。
鳴呼、母上には、敵わないよな。
禪兄さん、父上も、尊敬しているが、母上を、敬っているから。
自分達を、育てるのに、苦労したらしい。
母親に、視線を、移しながら、露草は、考えていた。
確か、幼い時に、我が儘を言った彼を、叱ったのは、母親だ。興味ある物を、夜中まで、やっていたら『無理してやっても、意味が無いだろう』と、あやしながら、露草を、寝かせていた頃もあった。
斑にとって、息子とは、大切な宝なのだろう。
それを、解っている禪が、母親を、労らない訳が無い。
尚更、兄弟喧嘩となると…。
目を、瞑っていない。
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