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ー天界・水輝國・水鬼帝邸・リビング
ピタッと、止まる二人。
恐る恐る後ろを振り返れば、仁王立ちしている父親を見て汗を足らす。
「いい歳して、兄弟喧嘩とは情けない」
「母は、そいゆう風に教えた覚えないぞ…」
「ごめんなさい」
「…」
両親に、浴びられ、小さくなる上の兄を見ながら露草は、呆然とする。
流石の長男ですら、タジタジなんだから、この両親は強者だ。
「露草、見ていたなら止めないか」
「俺が、止めに入ったとしても、止めませんよ。なにせ…一人は銀莱一族の次男坊を落とす為に必死だし、もう一人は、若い貴族神から逃げる為に、鬼畜現代翁の条件をしっかり守っていますからね!」
「ななな…」
「露草っ、何で知ってるんだよ」
慌てる禪と、暁草。
「俺に、入ってこない情報はないんだよ。禪兄様、暁草兄様…」
「あれか。そういや、翔也が、満面な笑みで『可愛い猫を、掴まえる為に匿ってるんです』とか言ってたなぁ」
「隗、待て、コレが“可愛い猫”か?」
首を、傾げながら駁が、指をさす。無論、小さくなっている暁草なんだが。
「翔也からしたら“可愛い猫”なんじゃないんですか?駁さん」
「っ、ぶっふ…アハハハっ…暁草が“可愛い猫”だとよ。諷夜…」
大笑いしながら諷夜の肩を叩く。
ツボなのは、解る。
誰でも、一度聞けば、首を傾げて、考えてしまう。
現代翁が、笑顔で、暁草を目の前にして『可愛い猫』と言っていたら、凝視してしまうのだから。
斑が、笑いたくなるのも、仕方がない事。
翔也が、匿っているなら…。
尚更の事だよな。
あれだけ、派手に、言ってしまう彼は、凄い。
一人しか愛さないと、断言している翁が、水鬼帝の次男坊を、匿っている姿が、想像出来ないのだろう。
しかしながら、翔也が、暁草を、助けるのには、意味があった。
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