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8ー13

昔を思い出す。 若い頃の駁は…。 父親の後を継ぐ事を夢見ていた。 『何時か、父みたく、三神帝の家臣達を指揮取る立場になりたい…』 なんて、無邪気な笑顔で、俺に言っていた。 契りを交わすに当たり、俺は、当に、父上が、亡くなっていたから、諦めていた。 氷蹄帝の場合は、仲人を誰にするか、悩んでいたな。 『俺との、結婚を考えてくれないか。駁』 『えっ…』 驚いていた表情をしていたな。 その時は、父が、まだ、健在だった様な気がする。 しかし、それは、夢だった。 父は、既に、居なかったんだ。 そう…。 -…あの、事件以来。 俺は、時間が止まったままなのかも知れない。 燐夜は、まだ、幼く、父との想い出といえば、抱っこされてあやされていたくらいだろうか。 父は…。 燐夜を、可愛がっていたから。 でも、夜神帝の残虐な事件と、関連しているのは確かなんだ。 父、燐兎は、何を願って、従兄弟の所に、足を運んだだろう。 なぁ…。 妃奈騎、教えてくれないか。 ソナタは、父とも、深く、関わっているんだろう。 「はぁぁ」 「溜め息吐いたら、幸せが逃げますよ。棺桶に、足を半分突っ込んでいる父上…」 おいっ。 嬉しそうに、吐く科白か? -…露草。 「…露草、傷を抉るな」 「俺は、抉っていません。事実を言ったまでです…」 「それを、人は、抉っているんだ。古傷が…疼いたらどうするんだ」 「抉り出すまでです…」 本当に、俺の子かな。 「露草に、隙を見せたら、ネタにされて、脅される。穏やかに、老後を過ごそうとしている俺の生活を脅かす息子め」 まったく、人の苦労も、解っていないな。 ソナタは…。 水鬼としての血が濃いだろう。 長年の中で、一番。 凄く、濃い血筋だ…。 「そんな息子は、思うんです。裏の性格さえ出さなければ、社交パーティーには、影響は、出ないんじゃないかと…」 「止めておきなよ。露草ちゃん。どう考えても、その性格をしまえる自信は…後から、剥がされるから」 隗、それは、前提なのか?

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