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8ー18
揺るぎない物が、迫ってきていました。
時の流れに乗り…。
-…運ばれてくるのは。
血の匂いでした。
それは、この世の万物に値するのか。
否か。
誰も知らない報せが、波に乗って運ばれてくる。
紅い桜が、ひらりひらりと、舞い散る中。
葉は、静寂だった。
これは、三神帝の御上に、執着した男が。
軈て、目覚める合図だ。
ゆるりと、迫ってくる奴は、再び、あの頃の隗斗を見て、微笑むのだろう。
紅き血に、染まった悲劇の幕開けだ。
ゆっくり…。
息を潜めている。
『だから、姉さん…それは』
ポチャリと、雫が落ちる。
微睡みの中から、目覚めたら、次は。
-…我が子か。
“アルステェム”。
何時の世も、世界は、破壊を望む。
夢の彼方へ…。
-…誘われる度に。
蓮華。
『君の夢を見るよ…』
ゆらゆら揺れる陽炎の様に、美しく散る華は、九尾が照らす火みたいだ。
此の、狭間は、少し、過ごしすぎた。
揺れる狭間に…。
再び、隗斗を、見ようとは、思いもしなかった。
記憶の欠片が、一つ。
『●●●の弟…械…』
君に、逢う日が、来ようとは。
透き通る髪が、風に靡いていった。
『“アルスティム”。随分、懐かしい言葉だ…』
静かな場所で、囁かれた言葉は、二人の耳には入らなかった。
鬼桜、今宵は、少しばかり、忙しいな。
木々の音に、挟まれながら感じる雰囲気は。
昔と、変わらず懐かしさに包まれる。
気紛れで、授けた命が、こうも、早く、芽吹くとは。
付いているのか、必然なのか。
誰も、知りはしない真実。
決して、触れない出生。
紅い血から生まれた男が、築き上げた世界。
迚も、興味が、そそられるぞ。
『ほら、行こうか。“羅雪(らせつ)”…』
次の時代は、泡沫に、埋もれているかも知れない。
物語の一部が、開かれていく。
それを見れないのは、残念だが。
俺も、男として変わったなら、次の未来が。
-…決まっている。
こんな所で、変わるなんて驚きだよ。
愛しい、マイハニー。
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