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8ー19
-天界·水輝國·水鬼帝邸·隗斗の寝室
「眠い」
瞼を、擦りながら、男性は、ベッドへ、倒れ込んだ。
-…今宵は、何だか。
凄く、眠気に贖えない。
まだ…。
早すぎないだろうかなんかって、脳裏で考える隗斗は、重たい瞼を閉じた。
何処へ、案内しようとしている。
古き、神々よ。
『貴方が、目覚めなければいけない世界…』
-…●●●…。
何処からともなく、聞こえてくる声音に、隗斗は、意識を失うのである。
これは、必然にも、導かれた結果なのだろう。三神帝の姫が動き出す合図が、鳴り始めるのが解った。
女性専属、九尾隊が、動き出す。
「…筆頭は」
地を這う大きさを持つ、彼だろうか。
明けの明星に、輝かんばかりの夜を思い描かすのだろう。
隗斗の脳裏にある記憶は、うっすらと、残っているだけで、容姿がどうとか、性格がどうとかは、まったく、不鮮明であった。
ただ、凄く、精悍な顔つきをしていた様な感じが面影に残っている。
『-…そんなのは、単なる曖昧な記憶よ、隗斗。どんなに、覚えていようと、断片にしか過ぎない。例え、私専属の九尾隊でもね…』
まるで、記憶は隠蔽が出来ると、言われてる様だった。
『片隅に残っている記憶。動く、九尾隊が…』
ふんわりと、桜の匂いにも近いが、明らかに、フラワーシャワーを浴びている様なフローラルな香りが、漂う。
これは、女性特有の香りだろうか。それとも、夢の案内人の匂いだろうか。
不思議な薫りに包まれる彼は、思わず。
「靄華(あいか)」
寝言で、名前を呼ぶ。
『…これ、水鬼帝の若君である三男坊に、付けておくわ。隗』
一瞬だけ、姿を現した女性が、冷めた色合いで、彼を睨み付けた。
こんな所で、名前を呼ぶとは思わなかったのだ。
他の者が、聞いていていなかったとはいえ。掟は掟。
無防備に、名前を口にするのは、反則だ。
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