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それが、彼女達兄妹の兄である。
四十年前に、忽然と、失踪し、四十年後に再び、再会出来るとは誰も、思いはしない。
父親すら、欺いていた事になるのだが、全然、気にした様子も無く、ニコニコ笑っている姿を見るからに、うっすらと、勘付いていたのだろう。
今宵の、社交パーティーが、開かれた理由を。
華やかに、着飾った貴婦人達が、うっとりとした瞳で見るのは、父親だ。
三神帝 千綵は、自分の容姿を理解した上で、身のこなしや、紳士さを忘れない男であるが、誰も知らないのは、その、裏の顔だ。
計算高く、生きている彼は、総帥としての立場を忘れない。
殺戮神として育てられ上げられた感性は、見事なまでに、肉親に認められている。
だから、恐ろしいのだ。
娘ではあるが、千綵の笑顔の裏に隠されたモノは、見た事が無い。
そんな遺伝を引いている長男は、正に、磨き上げられた殺戮神。
己を理解し、殺戮事態を美学だと言っている。故に、社交パーティーでも、華なのだ。
「これは…これは、黎斗様…」
急に、声を掛けて来た人物に、妃雪は、目を開いた。
水輝國のシステムを担っており、貴族でもある彼が、社交パーティーに、顔を出すとは思わなかった。
イメージ的に、媚を売ってくる貴族達を祓うのが、面倒臭いと、考えていそうな現代翁。
「おや、久し振りだね。翔也」
「ご無沙汰しております。今宵は、ご家族が、一緒なんですね…」
「そいゆう君こそ、可愛らしい女性を、お連れで」
にこやかに笑みを浮かべる二人に、彼女は固まる。
「-…翔也にしては、珍しいね…」
「千綵様、お久しぶりで御座います。ご機嫌は、如何ですか?」
「機嫌が良くなければ、参加したりしないよ。今宵は、家族再会の日だからね…」
「…あぁ」
-…妖しいですわ、父様。
千綵の笑う顔を見て、妃膤は、視線が、逸らせずにいた。
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