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7 消えない温もり③
「エウディアー、エウディアー」
肩を揺さぶられて目を開くと、秀麗な顔をした男が覗き込んできていた。
「なんだよ。ヒューエトス。また俺とヤりたいって?」
にやりと笑いかけると、ばか、そうじゃないと頭を叩かれる。
「じゃあ何だよ。ここは寝心地がいいから寝かせといてくれよな」
ヒューエトスの膝に頭を乗せ、再び惰眠を貪ろうとすれば、ヒューエトスにそっと唇を啄まれるのを感じた。
俺はその心地良い感触をいつまでも味わいたかったが、ふいにこれが夢だと気がついてしまい、さあっと夢の残像が消え去ってしまった。
「ヒューエトス……?」
いつもなら呆気なく記憶から消えてしまうのに、どうしてかその名前だけが残っていて、薄っすらと目を開きながら呟く。とても幸せで、満ち足りた気持ちだったのに、目を覚ました途端に猛烈な悲しさに襲われた。
ヒューネルが既に去ってしまった後だったからだ。
「……っ、ヒューネル、ヒューネルっ」
裸のままシーツにくるまり、丸くなって、ただ彼の名を繰り返し呼ぶ。そうすれば彼がここに戻ってくるというように、何度も、何度も。
「……っく……ひっ」
いつしか嗚咽交じりの声になり、名をまともに呼べなくなって、ただ涙を流し、悲しみに堕ちていく。悲しみには底がなく、泣いても泣いても深まる一方だというのに、いつまでもヒューネルの温もりばかりが体のそこかしこに残っていた。
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