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第10話 祝の誓約書

カーテンを閉め忘れた窓から入る光が顔に当たって眩しい。 朝かー、と思って伸びをしようとしたけど布団か何かが身体に絡まっていた。 しかもなんかもぞもぞ動いてるぞ。背中と頭と股間があつい…。 はっ!!と覚醒して飛び起きようと思ったけど身体が動かない。 何だこれ?金縛りにしてはかなり暑苦しい。 背中にぴったり雪男(イエティ)みたいなのがくっついていた。 腰のところには腕が絡みついていて、その先の手が俺のチンコを守るように股間のところで合わさっている。 両脚には、俺よりずいぶん長い脚が絡まっているし、つむじの辺りからは静かな寝息と共に暖かい鼻息がかかっている。 「うぎゃーーーーー!!!!痴漢ーーーー!!!!」 それを何と呼んでいい分からずに、とりあえず痴漢として思い切り叫んだら頭に固いものがゴツンと当たって、頭上から声がした。 「いてぇ…。勘助くん、早起きだな…」 「ひっ!!ヒワイ!?放せ、手を放してよ!」 びっくりしすぎて思わず呼び捨てにしてしまった。 布団の中で俺をがっちりホールドしたまま頬をすりすりさせて、ヒワイさんが猫なで声を出す。 「んー、もう少しこのまま…君の朝勃ちをこの手で感じてたいよ」 どっかのクサい歌詞みたいなことを俺の大切なチンコを包みながら言わないでほしい。 手脚をばたつかせ身体を捩って抜け出ると、俺も奴もパンイチだ。 「え?え?あれ?」思わず自分の股間とヒワイさんを何度も見ていると、布団の中で横向きになり、片肘をついて頭を起こしてニヤっと笑いかけられた。 いやまて、ケツは痛くないぞ。てことは…いやでも酒も飲んでないし(未成年だし)? パニクる俺の後ろ頭を小突いてきたのは、珍しく朝起きてきたかーちゃんだった。 「なーに騒いでんのよ、勘助」 「かーちゃん!なんで朝起きてんの?いや、それよりなんであんなの入れたの?なんで俺の布団に入ってるの!?」 「電車もない時間に放り出すわけにもいかないでしょ。布団がなかったからさ、一緒に寝る位いいじゃない、男同士なんだし」 いやいやいやいや、昨日変質者と言っていた相手を可愛い息子の布団に放り込むんかい、かーちゃん! ジドッと恨めし気に見る俺の視線に気づいたのか、かーちゃんはにっこり笑って食卓の上に置いてある紙を手に取った。 「こ・れ♥ 誓約書かいてもらったから大丈夫よ」 近づいて読むと、きれいな字でこう書いてあった。 誓約書 私、祝 周二郎は、万が一うっかり谷山 勘助に手を出したら43万円を谷山 浜子に支払います。 某月某日 祝 周二郎 印 因みに、43万は、100万を消した上に書いてあった。 「昨日書いてもらったの、いいでしょ?」 浜子はくるりと向きを変えて台所に向かい、食器と、インスタントスープとトーストとプチトマトのパックを出してきた。 うん、久しぶりのわが家にはやっぱり帰ってくるもんじゃない。

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