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第25話 急所、ネコが噛むぞ!

薬が抜けるまではバイク乗るなって言われて、早朝にヒワイさんの運転で家まで送ってもらった。 たまに後ろに乗ると新鮮な感じがするけど、190センチの人が前にいると成長途中の俺(四捨五入で170センチ)には全く前が見えねぇよ。 「ただいまー」 っていつも通り玄関開けたら、かーちゃんがシベリアンハスキー並みのすごい顔で出て来た! あれ?俺なんかやったっけ?って身構えたら、玄関先でヒワイさんの胸ぐら掴んでそのままずるずる奥に引き摺って行った。 かーちゃんとひわいさん、何げに仲良くなってるみただけど、何か悔しいぞ。 ん?何で悔しいんだ、俺? 今日の御供え物は、多分昨日から置きっぱなしのシベリア。 朝の餡子とカステラはやっぱ最高。すきっ腹に牛乳と一緒に腹に流し込みながら待ってるけど、扉の向こうで何やら盛り上がっている。 塩気が欲しい所なので、冷蔵庫の魚肉ソーセージを食べながら壁に耳を付けてみたら、『サイン座位(催淫剤)』だの『インコ座位(淫行罪)』だの、朝っぱらから聞いたことない体位の話してる。 謎だ。 唯一分かったのはかーちゃんの「その豚焼き殺す!」っていうおっかないセリフだけだった。 話がよく分かんないし、もう眠くもないし、体も動くから仕事したいのに電話はうんともすんとも言わない。 1人で待ってるのも退屈になってきたので、 「最近変な事ばっかでさー、俺はもう仕事に生きるのだ、な、父ちゃん」 って、遺影に話しかけていたら扉が開いてかーちゃんが出て来た。 「かーちゃん、話し終わった?」 「勘助ッ!…んーと!」 頭を抱えたぞ。痛いのか? 「風邪でもひいた?」 俺の言葉にがばっと顔を上げて歯を剥いた。 笑ってりゃキレーなのに、怒るとドーベルマンみたいな顔になってマジ怖いぜ。 「ばかたれっ!知らない人と密室で二人きりになるんじゃない!あと、そんなところで飲み食いするんじゃない!」 なるほど、確かにそうだ。 「あー、はい」 「それから…、うーんと…」 「?」 「ああ、あれだ!掘られそうになったら急所噛んでやんな!」 うんと、かーちゃんそれは、あれだ。相手の急所が俺の口の中にある前提だな? 「まぁまぁ、掘られそうになってる時点で多分もうやばいから」 「だまれっ、ヒワイの癖に正論吐くな!」 かーちゃんとヒワイさんがまた漫才はじめた。くそう、なんでそんなに楽しそうなんだ、この二人は。 俺もヒワイさんと…?ヒワイさんと、何かするはずだったっけ、あれ?

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