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指先の熱-3 side千尋

にっこりと笑顔を作ってそう言うと、賢治さんは大きなカバンから光沢感のある拘束具を取り出し始める。 「ベッドに横になって」 「はーい」 「拘束具を付けた瞬間から、もう千尋が何を言っても辞めてあげられないからね」 「辞めなくて良いですよ、だってそうされないと僕は気持ち良くなれないんですから」 そうだ、俺はソウイウ事をされないと気持ち良くなれない。痛くて苦しくて死んでしまいそうな時程、心底喜びを感じる変態だ。 優しくされると居心地が悪い、甘やかされてもどうしたら良いか分からない。だからこそ、痛め付ける事に快楽を覚える人に必要とされていたい。 今日の相手……賢治さんは躊躇いなく俺を傷付けられる人だろうか? それとも躊躇して途中で逃げてしまう人だろうか? 「あ"っ、……い"っ……」 ぼんやりとした頭でそんな事を考えていると、突然前髪を掴まれてそのまま壁に打ち付けられてしまった。 唐突に訪れた痛みに頭が追いつけず小さくうなだれていると、今度は股を大きく広げられて少しだけ勃起し始めていた性器の先端に爪を立てられる。 「千尋は、今までこの体でどんな事をして来たの?」 「……ッ、もう覚えてないですよ」 「大抵の事はして来ただろうけど、金払ってるのはこっちだから好きにさせてね」 先端を抉り取るようにして爪で引っ掻かれると同時に、どこからか取り出したローションで亀頭の先端が濡らされていく。 拘束されてしまっているせいで確認はできないけれど、先端が染みたように痛む所からすると、もしかしたら少しだけ肉が抉られてしまったのかもしれない。 「それにしても本当に汚い体だね」 「……傷の数だけ、愛されてるとは思えませんか?」 「思わないよ。汚いゴミみたいだ」 自分が仰向けになっているせいか、立っている賢治さんに言われると酷く心が締め付けられる。 汚いゴミだなんて事は自分でも分かっているし、こんなのは可笑しい事だなんて何度も思った。 けれど、そんなゴミに執着して何度も何度も金を払う人もいるのだから皆同罪だ。ゴミを愛してしまう可哀想な人達。 ベッドに寝転びながら柔らかい笑顔を向けると、賢治さんは馬乗りになってゆっくりと首に手を掛け、ギュッと親指に力を入れる。 「ゴミは愛されない。ゴミはゴミのまま汚く地べたを這いずり回ってみすぼらしく生きるべきだ」 「……はッ、」 徐々に徐々に空気の通り道を潰されていく感覚は、すぐそこにまで死を引き寄せてしまう。 火照った頭をより一層熱くして、意識が遠のき始めてしまいバタバタと手を動かすけれど拘束された手足では何も出来ない。 「可哀想な子。可哀想過ぎて沢山虐めたくなるよ」 「……ッ、ゲホッ、げほっ、ぇ」 視界に靄が掛かり始めた瞬間、パッと手を離されて空気が勢い良く体内に入って来て思い切り噎せ込んでしまった。 ……駄目だ、この人は人間の意識が飛ぶタイミングも何もかも知ってる人だ。躊躇わずに人を痛めつけられる人。 俺が一番好きなタイプの人。 そうとなったら早く……早く、俺の体を壊して嬉しそうな顔をして欲しい。 特殊な欲望を満たすために必要だと。 生きて居て良いと、存在して居て良いと言うことを俺の体を壊しながら教えて欲しい。 存在しちゃいけない人間が、存在して良いと言う事を。
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