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付き纏う王子①

【付き纏う王子】  体を揺すられる感覚に、メシアは「ふんぐう」と唸る。 眠気眼で揺すっている人物を見上げた。 「おはよ、メシア。もう起きる時間だよ?」 ギーチの柔らかな笑みと朝陽のキラキラが重なり、とても綺麗に見える。 「んっ、……おはよ、ギーチ。今日のギーチ、すごい綺麗」 くふくふ、と自然と笑い声を漏らして言いやると、サラサラの黒髪を揺らして彼は真っ赤な顔を両手で隠す。 照れ屋なギーチはとても純だ。 この奴隷小屋に所属するアンクのリーダー的存在でありながらメシアと年は変わらない。 「そっ、そそ、そんなことはないよ! メシア、寝惚けてるね。ほら、起きて」 ギーチに腕を引かれるままに上体を起こすと、他のアンクは既に起きていて布団を畳んでいた。 メシアも急いで起き上がり、ギーチと寝ていた布団を畳んでいく。 「ねえ、昨日から王子様が視察に来てるらしいよ。知ってる? 領主様のお屋敷に寝泊まりしてるって聞いた」 不意に、10歳前後のアンクに問われ、メシアは布団を掴んだまま動きを止めていた。 好奇心を瞳に湛えた幼いアンクに、無言で首を縦に動かす。 「……昨日、たまたま会った。僕の呪いが気になってるみたいでね。でも、僕はアンクだし、近付くなって追い返したけど」 へえ、と感嘆の声を上げるアンクはメシアを凝視して首を傾ける。 まだ幼い彼はメシアの呪いをよく解っていないのだ。 「メシアの呪いって、街の人間も皆が恐れているけど。実際のところ何なの? そんなに怖いものなのかな?」 「ほら、お喋りばっかりしてると間に合わないよ? 手を動かす」 無邪気に問うアンクをギーチが注意し、その話題は自然と流れた。 ギーチのフォローなのだとメシアには解っていた。  布団を畳み終え、身支度を終え、メシアは泉に向かうべく小屋を出ようと部屋の片隅に置いてある布鞄に手を伸ばす。 メシアが仕事の前に小屋を抜け出していることをアンクは皆知っていて黙認してくれていた。 本来ならば許されることではないが、奴隷小屋のオーナーが黙認しているので、誰も何も言わない。 オーナーであるトモユキ=スモシープは、表向き他の奴隷小屋のようにアンクを扱ってはいても、その実、誰も見ていないところではアンクにも優しく接してくれていた。 そしてトモユキは、ゴッドマーシュ家の三女、レイコの婚約者でもあった。 レイコは数年前に病気で亡くなったが、スノーレェイン家との関わりは深い。 メシアのことも気に掛けてくれている男である。  いつものように布鞄を肩に掛け、小屋を出ようとした時だった。
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